県議会質問
2015年10月28日 第4款 環境部
本県の特定外来生物対策について
民主党・県政クラブ県議団の原中まさしであります。政務活動費に基づき、発言通告に従い「本県の特定外来生物対策について」質問いたします。
私は、今回の質問にあたり、10月19日、20日の両日、特定外来生物である「ツマアカスズメバチ」の駆除の最前線である対馬市を視察し、対馬市自然共生課の課長ならびに担当係長に現場を案内して頂き、詳しく話を聞かせて頂きました。そして、市井の昆虫学者の境先生からも「ツマアカスズメバチ」の生態など、詳しい話を聞かせて頂きました。
この対馬市の視察を踏まえ、質問いたします。
近年、世界中で問題になっている昆虫が「ツマアカスズメバチ」です。
全体的に黒い体をしていて、和名の「ツマアカ」という呼称は、お腹の先端が赤みを帯びた色をしていることから名づけられました。
そこで、「ツマアカスズメバチ」標本の委員回覧と、関連する資料の配布について、委員長のお取り計らいをお願い致します。
< 資料配布、標本閲覧 >
それでは、続けさせていただきます。
お手元標本の「ツマアカスズメバチ」ですが、原産地はインドネシア・ジャワ島で、1836年にその存在が確認されました。これまで14の亜種が認められ、それぞれの生息地域での分化が大きい種とされています。
その後、東南アジアや中国南部に生息が急速に拡大し、台湾全土に広がり、韓国では2003年に侵入が確認され、その後、みるみる韓国全土に広がっています。
そして、いまでは対馬市にまで生息域が拡大しています。対馬に侵入した亜種は、韓国、ヨーロッパ中に拡大した中国産亜種( ssp. nigrithorax )とされており、研究者は韓国から入ってきたのは間違いないと指摘しています。
一方、西側では、パキスタン、インドから、フランス(2005年)、スペイン(2010年)、ポルトガル、ベルギー、ドイツ(いずれも2012年)など、ヨーロッパまで生息域が拡大しています。
ヨーロッパへの広がりはフランス・ボルドーへの侵入から始まったとされており、中国からの植木に紛れて女王蜂が運ばれたからといわれています。
話を戻しますが、韓国から対馬へは、どのようにして入ってきたかについては、昆虫学者や生物学者、環境専門家などによれば、韓国からのコンテナ船の資材や、フェリーなどに紛れて運ばれたとしています。
しかし、先ほど紹介しました対馬市自然共生課や境先生によれば、「ツマアカスズメバチ」が最初に発見された場所は対馬市上県町佐護というところで、ここは対馬市の最も北西、朝鮮海峡に突き出すような形の半島であり、韓国から偏西風に乗り、飛来してきたと考えておられました。
スズメバチの飛行速度は時速20~30km、オオスズメバチは時速40kmにもなるということで、オオスズメバチよりも俊敏で飛行能力に優れている「ツマアカスズメバチ」は、偏西風に乗り、1時間も飛行すれば韓国から対馬へ飛んでくることが可能だといわれていました。
いずれにせよ、国内で最初の侵入地である対馬市では、侵略的外来種としてミツバチの捕食による養蜂業への影響、生態系への影響、さらには刺傷(ししょう)被害が起こっています。
「ツマアカスズメバチ」の巣は、営巣場所・大きさともに在来種にはない大きな特徴があります。
巣は通常、樹木の枝先、それも10メートルを超える高所に営巣しており、巣の大きさは、最も大きなものでは高さ2メートル、幅1メートルを超えるそうです。
今回、対馬市豊玉町で、私も実際に巣を見ましたが、胴回りは約150~160cm、縦は1mほどの大きさで、これが通常の大きさということでした。
一匹の女王蜂が、これだけ大きな巣を作るということで、本当にびっくりしました。
日本にいる在来種のキイロスズメバチの女王蜂1匹が産む卵の個数は、だいたい500~1,500個ですが、「ツマアカスズメバチ」の女王蜂は、1匹で、その10倍となる5,000~1万個の卵を産むといわれています。
1つの巣には2,000匹から3,000匹頭の働きバチがいて、秋には、1つの巣に数百匹の新しい女王バチが誕生すると考えられており、それらの新しい女王バチが一斉に巣立ちをし、新しい巣をつくるため、生息域は一気に拡大することになります。いずれにせよ、とてつもない繁殖力です。
攻撃力や凶暴性、殺傷力では、在来のキイロスズメバチのほうが凶暴性は上ということですが、「ツマアカスズメバチ」のなにが脅威かといいますと、その驚異的な繁殖力です。
韓国では、生息するハチの半数がこの「ツマアカスズメバチ」で占められており、日本昆虫学会は「日本も10年後には、日本全国にツマアカスズメバチが生息する可能性がある」と警告を発しています。
そして、この「ツマアカスズメバチ」の生息に関する問題点を述べますと、
「ツマアカスズメバチ」は、普通はトンボなどの昆虫類を餌にしていますが、人間が出した生ゴミ、ゴキブリも食べるので都会にも適応できるそうで、高さ30メートルのビルや建造物にも平気で巣をつくるなど、人間が周りにいてもお構いなく、人間が普段生活するすぐ近くでも営巣(えいそう)するという厄介な生き物です。
二つ目は、この「ツマアカスズメバチ」はミツバチを主食とするということです。
したがって、仮に「ツマアカスズメバチ」が福岡県内で生息域を拡大することになれば、養蜂業者や果樹・園芸農家の方々をはじめ、農作物の収穫にとって、とてつもなく大きなダメージになるということです。
以上のことから、環境省は2015年、今年の3月、「ツマアカスズメバチ」を『特定外来生物』に指定し、営巣の調査や捕獲など水際対策を進めると発表しました。
こうした矢先、本年8月28日、「ツマアカスズメバチ」の巣が、北九州市門司区の下水処理場で見つかり、9月10日にその種が確認されました。福岡県内では初めての確認です。
研究者によると、「ツマアカスズメバチ」の生息域の拡大はスピードが早いため、発見するたびに駆除し、拡大を防ぐしかないといわれています。九州はもとより、日本国内への拡大を防ぐためには、いまからの1~2年が勝負であります。
外来生物は、定着してしまえば駆除の手立ては難しくなります。「ツマアカスズメバチ」の生息が北九州市で確認されたいま、福岡県として本格的に「ツマアカスズメバチ」対策に乗り出すべきであり、本県内での生息拡大の阻止、種の根絶に向けた行動を行うべきと考えます。
そこで、「ツマアカスズメバチ」に関して以下、質問いたします。
1.まず、本県として、「ツマアカスズメバチ」の脅威をどのように認識しているのか、お答えください。
【自然環境課 課長答弁】
- ツマアカスズメバチについては、生態系、人、農林業への影響が懸念されている。具体的には、生態系への影響としては在来のスズメバチの減少や捕食される昆虫の減少。人への影響としては、在来のスズメバチと同様に、人への刺傷被害。農林業への影響としては、飼育ミツバチへの攻撃、養蜂や受粉への被害。それぞれ懸念されている。
- ツマアカスズメバチは、生息域が広がるスピードが速く、急速に個体数が増加する可能性が高いことから、生態系などに対する大きな脅威となる可能性があると考えている。
2.対馬市は、これまで「日本本土・九州へのツマアカスズメバチの上陸を阻止するため、対馬で水際作戦を展開する」との並々ならぬ決意で対策を続けておられます。
そこで、本県として、これまで長崎県および対馬市と、「ツマアカスズメバチ」に対してどのような情報交換を行なってきたのか、お答えください。
【自然環境課 課長答弁】
- 本県では、対馬におけるツマアカスズメバチの生態、定着状況や対策などについて、長崎県と国、具体的には環境省の双方から積極的に電話による聞き取りなどを行って、情報交換を行っている。
- また、対馬市の動向については、長崎県や国との情報交換により、把握している。
3.先ほども述べましたが、本年8月28日、「ツマアカスズメバチ」の巣が、北九州市門司区の下水処理場で見つかり、9月10日に種が確認されました。
福岡県内で生息が確認されて以降、どのような対策を講じられてきたのか、お答えください。
なお、「ツマアカスズメバチ」対策に関する庁内の連絡・連携体制はどうなっているのか、併せてお答えください。
【自然環境課 課長答弁】
- 国が今年3月に策定した外来種被害防止行動計画では、国は「新たな外来種の導入を防止するため、侵入の可能性の高い地域におけるモニタリングや早期防除を実施する」となっている。
- これに基づき、国は生息確認と生息確認段階で発見された固体や巣の駆除を行っている。
- 具体的には、9月10日の門司区での確認の直後から、国は、北九州市と下関市内に、ペットボトルを用いたスズメバチ捕獲のトラップを約1,000個設置し、緑地、高木に巣がないかの目視確認も行って、生息確認を実施している。これまで、門司区内の最初の確認例のほかには、個体も巣も確認されていないが、新たに発見された場合、環境省において駆除することとされている。
4.「ツマアカスズメバチ」の繁殖力、生息域拡大のスピードを考えた場合、本県のみの対応ということではなく、山口県、佐賀県や長崎県、大分県など、北部九州・山口各県との連絡、連携が必要となってきますが、こうした近隣県との連絡調整、連携について、環境部として、今後、具体的にどうするのか、お答えください。
【自然環境課 課長答弁】
- 庁内の連絡・連携体制については、門司区内での生息確認後、速やかに、養蜂業を所管する畜産課、港湾を管理している港湾課や県民の皆さんの問い合わせを受ける保健福祉環境事務所との間でツマアカスズメバチの生態などに関する情報の共有を図っている。養蜂などの農林業への影響も懸念されることから、当課、農林水産部関係課や農林水産部出先機関などで構成する対策会議を早速開催し、情報交換などを行い、庁内の連携を図っている。
- ツマアカスズメバチの定着を防ぐためには、早期発見、早期駆除が肝要である。
- ツマアカスズメバチの繁殖力や生息域拡大のスピードを考えると、当然ながら、本県のみで取り組むのではなく、国はもちろんのこと、近隣県と緊密な連携が必要であると考える。
- このため、生息確認後、直ちに、本県から国や近隣県に働きかけを行い、国や本県を含む関係各県による会議を設け、近々開催することとしている。この会議において、情報の共有を行い、相互に連携して取り組みを進めていく考えである。
5.これから冬にかけ、新しく生まれた数百匹の女王蜂は、それぞれオスを引き連れて巣立ちをします。そして、交尾して、女王蜂だけが土の中で越冬して、あとのオス、働き蜂はみな死にます。
そして、越冬した女王蜂は、春先、土の中から出てきて、一斉に巣づくりに入ります。この時期、産卵のためにすごい食欲で他の昆虫類を捕食します。
したがって、3月から4月の2か月間、この2か月間が女王蜂をと捕らえるのにもっとも有効な期間でもあります。
春先の時期、トラップにかかるのは女王蜂のみですから、3月から4月の2か月間、数多くトラップを仕掛けることが大切です。
そこで質問です。
3月から4月、「ツマアカスズメバチ」対策の重要な時期、女王蜂捕獲のトラップを仕掛けることに関する環境省への働きかけも含め、本県としてどのような対策を講じるのか、お考えをお聞かせください。
【自然環境課 課長答弁】
- 9月10日、門司区内で巣が確認されているが、その後、新たなツマアカスズメバチの個体や巣は発見されていない。
- しかしながら、委員ご指摘のとおり、女王バチが越冬して、来年の春に一斉に巣作りを始める可能性もあるため、その時期にスズメバチを捕獲するトラップを設置し、早期発見し、発見された固体や巣を確実に駆除していくことが重要である。
- 来年の春のトラップ設置については、国において、その設置数や実施方法について専門家の意見を聴いた上で、検討する予定。本県としては、先ほど申し上げました近隣県との連携会議などを通じて、国にこの取り組みを確実に実施するよう働きかける。
- また、県民の皆さんや駆除業者の方に対しては、国から新たな情報の提供があった場合を含め、安心安全のために速やかな情報提供を行っていく。引き続き、県民から寄せられるツマアカスズメバチと疑われるハチに関する情報収集を行い、早期発見に努めていく。
6.最後に、「ツマアカスズメバチ」駆除に向けた環境部長の決意をお聞きします。
【環境部 部長答弁】
- このツマアカスズメバチは、委員ご指摘のとおり、強い繁殖力を持ち、その生息域拡大のスピードが非常に速いことから、生態系や農林業への影響や被害が懸念されている。
- 現状では、門司区内の1例のみが確認されているが、そこは既に駆除されている。今後、ツマアカスズメバチの生息域が拡大することがないよう、環境省や近隣県ともしっかり連携しながら、早期発見、早期駆除に努めて参りたい。
- 特に、春先の駆除対策は、重要な対策であると思っており、国において実施に向けて具体的な検討がなされている。今後、国に対して、確実に実効性のある対策を取っていくよう、強く要請するとともに、協力してしっかりと取り組んでいきたい。
- 県民の皆さんに対しても、必要な情報の提供を行っていく。ツマアカスズメバチの生息域が拡大し、本県に定着することがないよう、しっかり努めていく。
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