6月2日、福岡県議会「民進党・県政クラブ県議団」会派有志により、下記のとおり大分県ならびに熊本県を視察しましたので報告します。

1.視察要綱

(1)視察日時

  6月2日(木)
 ①13:00~14:00 
  『九州災害時動物支援センター』視察(大分県玖珠郡九重町湯坪)
 ②16:00~17:30 
  熊本県益城町 震災被災地の現状視察(熊本県上益城郡益城町)

(2)視察者

  原中 誠志(会派 政策審議会長)
  堤 かなめ(会派 政策審議会事務局長)
  大橋 克己(会派 視察委員長)

(3)視察先対応者

  『九州災害時動物支援センター』  
    管理責任者 林 泰輔氏

2.視察先の概要

(1)『九州災害時動物支援センター』

①施設の位置づけ
 地震や洪水、土砂災害等が発生した際、被災者が避難所に避難したとしても、ペットは避難者が寝泊まりするスペースには同伴出来ないといったケースがあります。また、飼い主とはぐれたり取り残された犬や猫もいます。

 この施設は、大規模災害が発生したとき、九州地区獣医師会連合会の獣医師が現地入りし、被災地で飼い主から直接ペットを預かったり、飼い主とはぐれたペットを保護し、センターに移送、一定期間、保護します。

 九州全県と山口県は、『東日本大震災』で動物救護のための支援や人員が不足したことを受け、同様の災害が発生した際、互いに円滑な支援が行える協定を2013年に締結しており、同センターの建設はそうした協力関係の一環となります。

 環境省によると、大規模災害時に都道府県域を超えてペットを保護する施設は、このセンターが全国初となります。

 当初、来年(2017年)4月の開設を目指していましたが、今回の『熊本大分地震』の発生により、開設を半年ほど繰り上げ、6月5日に開所式を迎えます。

②センターの管理・運営
 センターの設置・管理者は一般社団法人「九州動物福祉協会」です。

 この地は、もともとは(株)九州電力が所有するキャンプ場でしたが、その一部(約3万平方メートル)を借り上げ(借地料、施設借用料は無償。不動産税分を負担)、開設資金約3,000万円を投じ、既存の管理棟などを改修、約50匹収容のパドック(犬舎、猫舎)、ドッグランなどが造られています。センターでは、最終的に犬と猫で合計500匹程度の収容を目指しています。

 運営については、「九州地区獣医師会連合会」から派遣される獣医師やボランティアが常駐し、運営にあたることになります。

 なお、運営資金は年間約2,000万円で、当面、「九州地区獣医師会連合会」や獣医師からの寄付金で賄われるということです。

③センターの業務
 平常時は、餌やケージ、ワクチンなどの備蓄、盲導犬や救助犬、麻薬犬などを預かり動物管理師の育成や研修などに充てるほか、引退した警察犬や盲導犬が老後を過ごす施設として活用することを想定しており、将来的にはアニマルセラピーの施設を造る構想もあります。

 そして、災害時には、前述のとおり、ペットを保護し、飼育にあたります。なお、犬猫の受け入れ期間については最長1年をめどに、3ヶ月ごとに飼い主と協議して決めるとなっています。また、預かり料は予防接種などを除き、基本無料です。

④施設説明

センター案内看板(道路標識).jpgセンター案内看板(道路標識)

センター管理棟(元キャンプ場の管理室).jpgセンター管理棟(元キャンプ場の管理室)

スクリーンショット 2016-06-04 19.30.372.png

  • 1階は事務室、医務室、洗浄場、トイレ、風呂
  • 2階は宿泊室

センター管理者 林泰輔さん.jpgセンター管理者 林泰輔さん

センターの全景図.jpgセンターの全景図

  • 管理棟内の説明
  • 黄色「管理棟」
  • 薄緑大「オープン犬舎」
  • 薄緑小「猫舎」
  • 緑「犬舎」

林管理者による施設の説明.jpg林管理者による施設の説明

「オープン犬舎」.jpg「オープン犬舎」

  • 奥は「オープン犬舎」
  • 手前がオス用、奥がメス用

物資保管棟.jpg物資保管棟

犬舎(犬用パドック).jpg犬舎(犬用パドック)

  • ゲージ、医薬品、食料品などを備蓄
  • 全部で7棟

猫舎(猫用パドック).jpg猫舎(猫用パドック)  ●1棟

センター管理棟前で記念撮影.jpgセンター管理棟前で記念撮影

⑤結び
 今回のセンター視察でまず感じたのは、その施設環境の良さです。センターの敷地は、もとはキャンプ場であったということもあり、緑豊かな広々とした森林の中に位置し、犬猫の鳴き声や匂いを気にする必要はありません。そして、元キャンプ場の管理棟やバンガローなどの施設をそのまま活用し、パドック、オープン犬舎など、施設としては申し分ありません。

 将来的には施設も増やし、犬と猫で合計500匹程度の収容をめざすとしていますが、現地には十分な敷地面積があり、それも可能だと思います。

 今後の課題として挙げられるのは、ランニングコスト、いわゆる運営資金の面です。

 センターを維持するには、年間約2,000万円ほどの運営費が必要ということです。当面は「九州地区獣医師会連合会」や獣医師からの寄付金で賄われるということですが、施設の重要性を考えると、九州・山口9県をはじめ、管内の各自治体が運営費をそれぞれ供出し、永続して施設の運営が図られるように対処する必要があります。

 福岡県が音頭を取り、九州・山口9県をはじめ、管内の各自治体に財政確保を図ることが求められると思います。

(2)熊本県益城町 震災被災地の現状視察

①災害の現状
 本年4月14日の前震、16日の本震により、熊本県上益城郡益城町は地割れ、がけ等の崩落をはじめ、強い揺れによる家屋倒壊が相次ぎ、甚大な被害が出ています。

 今回の地震は、熊本県を北東から南西に走る布田川断層帯と日奈久断層帯が震源ということで、とりわけ益城町は布田川断層帯の真上に位置する関係から、町内一円に渡って大きな被害が発生しています。

 6月3日現在、益城町の被災状況は、死者21名(関連死含む、熊本県内69名)、家屋被害1万5千棟超(全壊、半壊、一部破損)、避難者2,279名(避難所15カ所)という、まさに未曽有の震災となっています。

 本震から50日ほどが過ぎましたが、倒壊家屋のほとんどは手つかずの状況にあり、いまだ復旧の段階といえます。本格的な復興には、まだまだ時間を要するというのが実感です。

②現地視察

益城町役場は震災で傾き、使用不可.jpg益城町役場は震災で傾き、使用不可。現在、緊急復旧に取り掛かっている。

1階部分が押しつぶされ、倒壊した家屋.jpg1階部分が押しつぶされ、倒壊した家屋

鉄骨の建物も倒壊している.jpg鉄骨の建物も倒壊している

アパート、マンションの被害も多い.jpgアパート、マンションの被害も多い

比較的新しく見える家も倒壊している_1.jpg

比較的新しく見える家も倒壊している_2.jpg

比較的新しく見える家も倒壊している

③結び
 地震発生から日が経つにつれ、国民の関心が薄れていくことが心配です。

 被害大きい益城町では、復旧の目途がついたとは、とても言えない状況です。ましてや、本格的な復興に入るにも、いましばらく時間を有すると思います。

 したがって、今後の課題としては、国や被災県・自治体はもとより、九州各県・自治体をはじめ、全国の自治体からの引き続きの支援が大切です。

 そして、現地では、これから倒壊家屋の片付けなどが出てきますが、多くのボランティアの力も必要となってきます。是非、継続してボランティア活動を望みたいところです。

 福岡県議会も県行政と一体となり、被災地支援を続けて参ります。