県議会「文教委員会」として管内(県内)視察を行ったので、以下、報告する。

Ⅰ 視察目的

 今回の視察目的は、「県内公立私立の高等学校のうち、特徴的な教育が行われている学校を視察し、その成果と課題を今後の本県教育に反映させる」というものです。
 そのため、県立高等学校1校、私立高等学校1校を選抜し、視察することとしました。

Ⅱ 視察要綱

1.視察日程

 2016年10月7日(金)

2.視察先

 (1)「福岡県立大牟田北高等学校」(大牟田市吉野555番地)
 (2)学校法人「筑陽学園中学・高等学校」(太宰府市朱雀5-6-1)

Ⅲ 視察報告

1.「福岡県立大牟田北高等学校」(「大牟田北校」)

(1)現地対応者


大牟田北校_対応者.jpg  ○田中 茂 校長
  ○副校長
  ○教頭

(2)視察目的

 「大牟田北校」は100年を超える歴史を持ち、市内外から多くの在校生が集まり、2万5千人を超える卒業生を排出する伝統校です。
 しかし、2006年まで入試倍率が1.06倍であったものが、年々、受験者(希望者)が減少し、2011年には0.48倍まで低下、定員割れとなり、学校存立の危機にありました。
 その後、2012年の「学校創立100周年」を機に、本格的な学校改革に努め、入試倍率は2014年には1.01倍、本年は1.21倍までに回復しました。
 このように、志願状況が〝Ⅴ字回復〟し、時代のニーズに応じた学校運営が出来るようになったのは、「大牟田北校」の教育方針の変革とともに、教育(生徒)指導の在り方が磨かれてきたことにあり、そのことで、生徒や保護者の信頼を得ることができたからです。
 今回の視察では、こうした学校の経緯、そして学校方針や教育の在り方を見ることとしました。

(3)沿革

 「大牟田北校」は、1912(大正元年)4月、「福岡県三池郡立実科高等女学院」として創立、翌1913(大正2年)に開校。創立から104年を迎える伝統校です。
大牟田北校_校舎入り口.jpg その後、1949年8月、現在の校名である「福岡県立大牟田北高等学校」と改称し、今日に至っています。
 旧校舎の老朽化に伴い、数十年前から改築の話が出ていましたが、2012年、学校創立100周年を迎えるのを機に、校舎の建て替えが実現。大牟田市甘木山にあった旧校舎から、大牟田市吉野の地にあった旧「大牟田商業高校」跡地に新築移転することとなり、本年4月、現在の新校舎が開校しました。

(4)校訓

大牟田北校_校訓.jpg 教育方針は「特進でもない、特待でもない、これから芽を出すコツコツ型の生徒を丁寧に、誠実に育てる」としており、校是「目指せ、自己ベスト! 〜人は自分が思う以上に、輝けると思う。〜」を掲げ、校訓である「誠実・勤勉・協同」をもって実現するという方針で生徒の教育にあたっています。

(5)新校舎の特徴

大牟田北校_新校舎1.jpg 生徒の良さを最大限に引き出すため、新校舎は様々な工夫が凝らされています。
 2階は「全学年棟をつなぐコミュニケーションストリート」とされ、廊下には学年の垣根を超え、生徒同士が自由に語らい、学べるコミュニケーション・ブースが設けられています。

大牟田北校_新校舎2.jpg 1階は、「知的情報センター」として「図書館」、「進路指導室」、「職員室」が集中的に配置され、生徒一人一人の進路相談に対応できるようになっています。また、生徒が集う「カフェテリア(食堂)」もあり、ここも学年を超えて生徒同士が集い、憩える場となっています。

(6)「大牟田北校」の教育

大牟田北校_教育.jpg 「丁寧なキャリア教育」を柱に、生徒一人ひとりを育てていくということを大切にしています。
 そのため、学年ごとに目標を設定しています。



 ・1年生:自分を知り、社会を知る
 ・2年生:目標を持ち、主体的に行動する
 ・3年生:地道に努力し、進路を実現する
 こうした教育目標に加え、カリキュラムの特徴として、「自己ベストで、君の未来を切り開こう」をスローガンに、2年生から自主的に進路を選べる「5コース制」をとっています。コースは、

大牟田北校_教育コース.jpg①私立文系大学コース
 ②医療看護系コース
 ③国公立文系大学コース
 ④理工系大学コース
 ⑤公務員コース
 となっています。
 そして、それぞれの生徒の実情、学力に合わせたナビゲーター・マップが用意され、進路希望に合わせたカリキュラムと合わせ、細やかな生徒指導が行われています。
 なお、生徒一人一人に「生徒カルテ」が作られ、教員は生徒の情報を共有したうえで、生徒の実情に合わせた指導に取り組むようになっています。
 また、偏差値だけでは測れない〝プロセス〟を大切にしており、様々な体験の機会を通して生徒の個性に気付かせ、磨き、伸ばす仕組みがとられています。
 1年生では「カタリバ(語り場)」や「上級学校訪問・職場見学」、2年生での「インターンシップ」や「キャンパス3デイズ」「修学旅行での企業訪問」などは、「大牟田北校」の特色といえます。
 こうした教育・指導により、生徒の満足度は91%に達しています。

(7)キャンパスライフ

 「大牟田北校」では、生徒一人一人に目標を持たせ、それを実現するため「鍛ほめ(鍛えて、ほめて)メソッド」を導入し、積極的に展開しています。
 その一環として、規範意識と自尊感情を併せて育む「ハートフル賞」を設け、達成した生徒にはピンバッジが提供されます。なお、こうした取り組みにより、今年1月には県教育委員会より「県立学校優秀校(生徒指導部門)」表彰を受賞しています。

(8)本年度の重点目標

 こうした取り組みを進めていますが、「大牟田北校」の本年度の重点目標は、

  • 自尊感情と規範意識を高め、生徒が生徒の良さに学び、いじめが撲滅された秩序ある学び舎をつくりあげる。
  • 生徒と教師が信頼感で結ばれた中で、教科指導力と生徒指導力を高めることにより、将来の自立につながる学力を育成する。
  • キャリア教育プランを定着させ、生徒に将来の目標と確かな学力を持たせることで、5コース制初の卒業生の第一希望での進路実現を目指す。
  • 保護者との連携を深め、学校と保護者が共に生徒を育てる環境を作り上げる「骨太の北高”共育”改革」を推進する。
  • 新校舎への移転に向け、地域との連携を深めながら、学校行事や部活動を活性化させ、活力みなぎる北高づくりを進める。
  • 教育内容の充実を図るとともにその取組を積極的に発信することにより、地域からの評価を高め、志願倍率が安定的に1.0倍を超えるようにする。

 としており、この重点目標の実現に向け、生徒、教員が一丸となり、取り組みを進めています。

(9)結び

大牟田北校_卒業生.jpg 「大牟田北校」は、卒業生2万5千人を超え、OB・OGは様々な分野で活躍しています。
大牟田北校にて_原中.jpg 一時は入試希望者が減り、定員割れを起こすなど、廃校という危機の次期もありましたが、現在では入学希望者も増え、新校舎の元、素晴らしい学校運営が行われています。
 これからも大牟田市をはじめ、県南地区で〝キラリと輝く〟高校であるよう願います。