Ⅰ 視察概要

1.日程

 2017年11月15日(水)~16日(木)

2.視察先

 長崎県対馬市

(1)11月15日(水)

 ①社会福祉法人「米寿会」 
 ②「対馬市役所」(「ツマアカスズメバチ対策」、「海岸漂着ゴミ対策」)

(2) 11月16日(木)

 ①環境省「対馬野生生物保護センター」(管理協力:長崎県自然保護課、対馬市)
 ②長崎県病院企業団「長崎県対馬病院」

Ⅱ 視察報告

1.社会福祉法人「米寿会」(対馬市美津町鶏知乙511-3)

(1)対応者

 〇理事長  米田 征四郎氏
 〇部長   米田 民生 氏(右写真)

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(2)「米寿会」の沿革と概要

「米寿会」の沿革と概要.jpg 「米寿会」は1994(H6)年1月に社会福祉法人の認可を取り、同年4月より障害者施設・就労継続支援B型事業所「あゆみ園」を開設、施設運営を開始しました。
以来、1999(H11)4月に就労継続支援B型事業所「杉の木ホーム」開設、2000(H12)7月に「学童保育けいめい」を立ち上げ、2002(H14)年6月には「対馬老人ホーム」を対馬市より指定管理を受け、高齢者施設の運営も行われています。
 そして、2006(H18)年10月に「外部サービス利用型特定施設」に移行し、同時期に訪問介護事業所「ヘルパーステーション かくさん」 を開設、通所介護事業所・訪問看護事業所・福祉用具貸与事業所と委託契約を結んでいます。
また、2008(H20)年4月に認知症対応型通所介護事業所「かざぐるま」を開設し、利用者に必要な介護サービスが選択出来るようになっています。

(3)「米寿会」の理念

「米寿会」の理念.jpg 「米寿会」の基本理念は「心豊(こころゆたか)」です。
 利用者の尊厳の保持と自立の支援を基本に、希望・嗜好アンケート調査、口腔ケアの充実、認知症ケアの確立、日中おむつゼロの取組み及びターミナルケアの実施等利用者の皆様の立場に立った取組みが進められ、利用者が安心・安全にして、心豊かに生活され、幸せを感じていただくよう努められています。
 また、相談活動や愛護活動等を通じ、家族、地域の方々との交流と連携を深め、開かれた施設運営を進め、地域に貢献できる取組みを展開するなど、利用者と職員が目標を共有しながら共に歩み、共に支え合う、温かいホームを目指されています。

(4)「米寿会」の施設所在

「米寿会」の施設所在.jpg 現在、「米寿会」には、障害者施設、高齢者施設、児童施設がありますが、障害者施設は全て自前(建物の建設含む)で、高齢者と児童施設は対馬市の指定管理を受けています。

 施設の所在は、壱岐市に「ケアホーム壱岐」、上対馬町に「あゆみ園」がありますが、それ以外の施設は、南対馬の厳原町と美津島町に集中しています。

 利用者は、全ての施設で約1,000人、職員数は127人となっています。

(5)施設の視察

 今回、「米寿会」の数ある施設のうち、就労継続支援B型事業「杉の木ホーム」を視察しました。
 「杉の木ホーム」の特色は、『障がい者総合支援法』に基づき、自立と社会経済活動への参加を達成するための施設です。また、利用者個々の能力を遺憾なく発揮し、利用者の笑顔を1回でも多く見るため、必要な生活支援並びに作業支援が行われています。
 生産活動内容は、地元対馬市産の木材を購入、加工し、製品化して販売しています。地元産の木材を使うため、地域との交流、地域資源の有効活用に努めています。

 作業内容としては、製材作業(木材の選別、梱包等)、しめ縄作業(しめ縄の製作)、工芸作業(木工品、小物、手芸品等の製作)、販売(炭製品、焼き芋販売等)、セルプ自販機での飲料水販売となっています。

 授産品製品は、〇腕抜き、鍋敷き、巾着等の手芸品、〇ストラップ各種、クラフトコースター、クラフトバスケット等の小物製品、〇対州白炭各種の炭製品、〇まな板、飾り棚、折りたたみテーブル等の木工製品となっています。
 更に、施設外就労として、〇清掃作業:老人ホーム、ホテル、公園、製材工場、〇家屋や事務所等の修繕、及びリフォーム等の請負まで行うなど、大変幅広いものとなっています。

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ラミナー材(対馬産檜)の加工工場
①マテライザー
②オートテーブル
③クロスカッター
④ラミナー製品
⑤バイオマスチップ製造
⑥オカゴ、廃材も商品化
⑦「杉の木ホーム」

(6)まとめ

 視察冒頭、施設側から米田部長の説明を受けました。その際、「米寿会」の施設が対馬市内に数多くあることに驚くとともに、各施設とも大変特色ある運営を行われていることに敬服しました。
 とりわけ、利用者の方々の就労保障、生活向上のため積極的かつユニークな授産事業に取り組まれていることに感心しました。それにより、施設の安定的な収入確保を図り、利用者にできるだけ高い工賃を支払うことに努められています。

 例えば、今回視察した「杉の木ホーム」では、地元対馬市産の桧の購入-加工-製品化-販売までを一貫して行い、加工段階で出てくる廃材やオカゴさえも商品として販売するなど、無駄をなくし、できるだけ収入に結び付ける工夫と努力がなされています。

 また、就労継続支援B型「あゆみ園」では、対馬市からごみ袋の委託製造販売を請け負っており、これが安定した収入源となっています。
 更に、対馬市産の樫の木を材料として「対馬備長炭」の製造・販売が行われていますが、この製品は火力も強く、火持の良い良質の白炭ということで、ほとんどが島外へ〝輸出〟され、本土のホームセンターなどで販売されています。
 加えて、「対馬備長炭」を加工した消臭剤、靴用の消臭剤も2次製品として製造され、販売されています。
 その他、クッション、バッグ、巾着など手芸製品。お正月のしめ飾りも清蔵・販売されており、「あゆみ園」の貴重な収入源となっています。

 障害者の方々の自立、社会参加を促進するためには、就労の機会と安定した収入が大切です。これらをいかに実現するか、それが施設経営にとって一番悩みの多いところです。

 今回視察した「米寿会」は、こうした施設の抱える悩みをいかに克服するかということに腐心されていることを伺い知ることが出来ました。

 大変有意義な視察でした。

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