県議会質問

1.気候変動に対応する筑前海の水産業の振興について
2.対馬混乗寄港便の活用について

2018年6月18日

 民進党県政クラブ県議団の原中誠志です。発言通告に従い、一般質問を行います。最初の項は、「気候変動に対応する筑前海の水産業の振興について」です。

 私は、昨年3月の「予算特別委員会」において、「福岡県周辺海域の環境変化と漁業への影響について」質問しました。

 そのときの内容は、「気象庁地球環境・海洋部」の発表によると、日本近海では過去百年間におよそ1.07度上昇しており、これは陸上の気温上昇率の0.52度と比べて大きくなっています。魚にとって海水温1度の上昇は、地球上の動植物にとって10度の気温上昇に相当するといわれており、海水温の上昇は水産資源に悪影響が出ると指摘する研究者、調査機関等の報告があり、気象変動などさまざまな要因で変化しつつある漁業資源の変化に対し、県としてどのように対応をしていくのか、というものでした。

 これに対し、答弁では「直近30年の本県沿岸域の年平均海水温を見ると、筑前海、有明海、豊前海ともに約1度上昇。」としながらも、「水産資源は、もともと変動するものであり、魚種ごとに増減する。その原因は、一概に海水温の変化による影響と特定することはできない。」と答弁されました。

 しかし、温暖化にともなう海水温の上昇や、海洋及び陸上での地球規模の気象変動は、様々な動植物、海洋生物の生態系へ影響を与えていると言われおり、国連の科学組織「生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学政策プラットホーム・IPBES」が今年5月23日に公表した報告書では、「環境負荷の高い養殖や乱獲、収奪的な漁業により、現状のままでは、今世紀半ばにアジア・太平洋地域の沿岸や海で漁獲可能な魚がいなくなる」と発表しています。

 更に、地球温暖化の影響もあり、2050年までにサンゴの90%が傷み、適切に管理されたサンゴ礁も年1%から2%ずつ失われると予測され、加えて、プラスチックごみが大量に海に排出されている川は、世界の10本中、8本がアジアに集中しており、これらの地域が世界の海ゴミの88%から95%を生み出しているとも指摘しています。

 加えて、世界の国々で魚の消費が急激に伸びており、世界中の海で、魚の奪い合いが起こっています。

 日本の漁業の現状を見てみますと、国の2017年の「水産白書」によれば、マサバやズワイガニなどの資源水準は前年より向上するなど、我が国にとって重要な魚種の6~7割の資源水準が中位から高位と評価する一方、スルメイカやサンマなど資源が減少した魚種も報告されています。

 全国の漁業生産を見ますと、本年4月26日に公表された「2017年漁業・養殖業生産統計」において、漁業・養殖業の全体の生産量は約430万4千トンと、前年に比べ1.3%減少し、このうち、海面漁業は前年比0.2%減の約325万8千トン、海面養殖業が4.6%減の約98万5千トン、川などの内水面が1.7%減の約6万2千トンとなっております。 

 このような、世界的な水産資源の現状や国内の状況をみますと、海洋資源の減少が心配されるところであります。

 本県に目を移してみますと、筑前海、有明海、豊前海に囲まれており、各水域ではそれぞれの特色を活かした、さまざまな漁業が営まれております。

 中でも、筑前海は、温暖な対馬暖流が流れ込む、国内でも指折りの漁場となっており、トラフグ、マダイ、アジ、サワラなど世界に誇れる魚種が漁獲されています。

 先ほど述べましたように、世界的には乱獲などにより水産資源が減少していくと言われている一方で、現在、この豊かな筑前海の沿岸漁業の漁獲量は、比較的安定していると聞いておりますが、漁業生産が比較的安定している今のうちに、資源を保護し、本県の漁業生産を維持していくための対策を講じるべきと考えます。

 そこで、以下、知事にお伺いします。
1点目は、外洋における水産資源を管理するための国際的な枠組みをお示し頂いたうえで、県として、筑前海の資源づくりにどのよう取り組んでいるのか、お答えください。

【小川知事答弁】
問 筑前海の資源づくりについて

  • 水産資源を管理するための国際的な枠組みとして、①排他的経済水域内については、沿岸国が、②公海については、関係国が協力しつつ、生物資源の保存及び管理を行うことが国際法により定められている。
  • 排他的経済水域内に位置する筑前海において、県では、マアジ、マダイなど魚類を対象とした人工魚礁の設置や、アワビ、サザエなど貝類を対象とした投石による漁場づくりに取り組んでいる。
  • また、漁業者が、トラフグやクロアワビなどの種苗放流に取り組んでおり、健全な種苗を安定的に放流できるよう、種苗の生産・販売を行っている「ふくおか豊かな海づくり協会」に対し、種苗の生産経費を助成している。
  • さらに、筑前海の資源管理については、漁業法等の公的規制に加え、漁業者が、県の指導のもとに、禁漁期間の設定や小型魚の保護などの自主規制を行っている。
    • また、広域に回遊するトラフグについても、長崎県や山口県など近隣県と定めた広域資源管理方針に基づき、漁業者が資源管理に取り組んでいる。
  • 県としては、漁場づくり、種苗の放流及び資源管理を総合的に実施することで、筑前海の資源づくりに取り組んでまいる。

 2点目は、海洋環境の変化に応じた漁業の在り方についてです。
 先ほど述べた国の白書によりますと、海水温の上昇により、高水温を好む魚種が生息・回遊する海域が北上する一方、低水温を好む魚種が南下しなくなるなどの現象が起きているとあります。

 本県においても、筑前海の海水温の上昇など海洋環境の変化に伴い、魚種によって減るものもあれば、増えるものもあろうかと思います。このような変化に対応するため、漁業者も海や魚の状態に合わせた漁業を行うことが必要だと思いますが、県としてはどのように対応しているのかお伺いします。

【小川知事答弁】

  • 筑前海では、魚の種類や回遊状況の変化に応じて、漁業者は、まき網、刺し網、釣りなど複数の漁法を組み合わせて操業することにより、経営を行っている。
    • 一方で、増加している資源や十分に利用されていない資源もあることから、漁業者の経営安定のためには、これらを有効に活用することも重要である。
  • このことから、県では、資源が増えているサワラについて、船上でのしめ方や冷やし方など品質向上のためのマニュアルを作成し、これに沿って漁業者を指導した結果、非常に高価格で販売されている。
  • また、これまで十分に利用されていなかった海藻のアカモクについて、その品質が高い採取時期や加熱時間など漁業者に指導した結果、筑前海の4漁協で加工され、量販店にも出荷されている。
  • 県としては、漁場の環境や漁獲の状況を的確に把握し、漁業経営の安定に向け、資源の有効活用に取り組んでまいる。

 3点目は、筑前海の養殖業についてです。
 天然魚の漁獲量が減少している中、「養殖業」を振興することも非常に大事なことだと考えます。

 全国的に盛んに行われているのが魚の養殖であります。餌を与えて育てる、すなわち給餌(きゅうじ)養殖は、餌としてイワシやサバなどが利用されています。

 「日本経済新聞」によりますと、たとえば、ブリを1㎏太らせるためには6㎏の、同じくマダイを1㎏太らせるためには5㎏の魚が餌として必要とされるそうです。

 一方、本県でも盛んである貝類や藻類の無給餌(むきゅうじ)養殖のうち、ノリについては、海水中の窒素やリンなどを吸収して生長しますし、カキはプランクトンを栄養源としているわけです。

 このように、貝類や藻類の無給餌(むきゅうじ)養殖については、魚の養殖と異なり魚で魚を作るといったことはないわけであります。

 筑前海では、最近、カキの養殖が盛んに行われており、冬場にはカキ小屋が大変な賑わいを見せていますが、カキの養殖は魚の餌を使うことなく、筑前海の豊かな恵みだけで育てられる養殖方法です。

 そこで、知事にお伺いします。
 県では、筑前海においてどのようにカキ養殖を振興しているのか、お示しください。

A

【小川知事答弁】

  • カキ養殖は、餌を与える必要がなく、漁場が近いことから使用する燃料が少なく、また、大きな設備も必要としない。
    • このため、生産コストが低く、収益性が高い養殖業である。
    • 現在では、カキ養殖は、糸島市から北九州市まで、多くの地域で行われるようになり、立地を活かして、カキ小屋や直売所での販売も拡大している。
  • 県では、漁業者に対し、養殖イカダの配置や、イカダに吊すカキの適正な量など、養殖技術に関する指導を行っている。
    • また、生産の安定を図るため、カキの餌となるプランクトンの量や、カキの成育状況などを調査し、漁業者へ迅速に情報提供している。
    • さらに、カキの衛生管理を徹底するため、カキの洗浄機や紫外線殺菌装置などの整備に対して支援を行うとともに、漁業者団体が開催する研修会において、出荷時の取扱いなどについて、指導を行っている。
  • 県としては、引き続き、このような支援を通じ、カキ養殖の振興に取り組んでまいる。

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