県議会質問

Ⅲ 福祉労働問題について

1.メンタルヘルス対策とストレスチェックの導入について

 メンタルヘルス対策とストレスチェックの導入についてお聞きします。
 厚生労働省は、より積極的に心の健康の保持増進を図るため、「労働者の心の健康の増進のための指針」、いわゆるメンタルヘルス指針を2006年3月に公表し、事業場におけるメンタルヘルス対策を促進してきました。

 この事業場とは、一定の場所での組織的な作業のまとまりを指し、企業全体をひとまとめにするのではなく、支所、販売所、生産工場など、それぞれが事業場にあたり、同じ場所にあっても労働状態が違えば、別の事業場とみなすことになっています。

 しかし、健康保険協会(協会けんぽ)のレセプト(診療報酬明細書)を分析した九州先端科学技術研究所によると、中小・零細企業の従業員がうつ病などの精神疾患で医療機関を受診した件数が、全国でも九州でも、2010年から2014年の5年間で3割も増加したことが明らかとなりました。

 このような、労働者の精神疾患の増加を踏まえ、昨年6月25日、「労働安全衛生法」の一部が改正され、本年12月1日よりストレスチェックを実施することが義務付けされました。

 なお、50人以上の労働者を有する事業場では責務とされていますが、50人未満の労働者を有する事業場では努力義務となりました。そして、その対象は民間の労働者にとどまらず、県職員や学校の教職員など公務員にも適用されます。

 我が会派は、先の「6月県議会」の代表質問で、本県内の労働相談が6年連続、年間1万件を超えていることを問題視し、民間事業所では労働環境の改善が進んでいないのではないかと質したところです。

 こうした労働者のメンタルヘルス対策をめぐる国の施策、本県の労働行政の在り方などを受け、以下、メンタルヘルス対策とストレスチェックの導入について、知事と教育長にお聞きします。

 1点目は、本県民間労働者のストレスの実態と、ストレスチェックの実施についてです。
 まず、本県民間労働者のストレスの実態について、県としてどのような手法を用い実態を把握しているのかお尋ねします。

【知事答弁】

  • 厚生労働省による全国調査では、近年、5割を超える労働者が、仕事の量や質、職場の対人関係、仕事上の役割や地位の変化等を原因とする強い不安、悩み、ストレスを感じている、という結果が出ている。
  • 県内4か所の労働者支援事務所に寄せられる労働相談においても、「職場の人間関係」や仕事の量に関わる「労働時間、休日・休暇」など、ストレスの要因となりうる内容が近年増えてきている。

 その上で、県内民間事業者へのストレスチェック導入の意義について、知事はどのような認識をお持ちなのかお尋ねします。

【知事答弁】

  • 今回新たに導入されたストレスチェック制度は、労働者自身のストレスへの気づきを促すことにより、メンタルヘルスを身近な問題と意識する機会となる。
  • ストレスが高いという結果の出た労働者からの申し出を受け、会社側が医師による面接指導や、必要に応じ仕事の軽減措置を実施することにより、職場が働きやすく健康的な環境に改善されることとなり、メンタルヘルス不調を未然に防止する意義があると考えている。

 加えて、このストレスチェックの実施は罰則規定がないため、それぞれの事業場でストレスチェックが確実に実施されるのか疑問です。

 福岡県中小企業団体中央会は、「大手と違い中小は景気回復の恩恵が少なく、経営も厳しい。どこまでストレスチェックの検査に力を入れるか、判断は分かれるだろう」と見ています。

 そこで、ストレスチェックの実施が求められている民間事業者が、確実にストレスチェックを実施するために、本県として民間事業者に制度の主旨を周知徹底すると共に、どのように実施を促すのかお尋ねします。

【知事答弁】

  • この制度が民間事業者において確実に実施されるためには、まずは事業者にストレスチェック制度の趣旨、目的を正しく理解していただくことが重要である。
  • このため、県では、平成26年6月の労働安全衛生法の改正を踏まえ、制度の概要を県ホームページにおいて分かりやすく解説するとともに、企業経営者を対象としたセミナーにおいて説明するなど、理解の促進に努めてきた。
  • 今後も、様々な機会を捉えて、本制度が着実に実施されるよう制度の周知を図っていく。

 次に、本県職員と教職員に対するメンタルヘルス対策についてです。
 知事と教育長は、任命権者としての責任を負っているという自覚を促すという意味を込め、以下、3点お聞きします。

 1点目は、本県職員と教職員に対するメンタルヘルス対策についてです。

 本県では、すでに2008年度から、県職員を対象にストレスチェックに取り組んでいます。

 教職員には、「教職員のためのメンタルヘルス相談事業」が、1994年度にスタートし、メンタルヘルス研修が2007年度から実施されています。

 これらの取り組みによって、本県職員と教職員のメンタルヘルス対策にどのように効果が上がったのか、知事と教育長にそれぞれ認識をお尋ねします。

【知事答弁】

  • 平成20年度からストレスチェックを導入し、職員自らがストレス度を把握できるようにするとともに、高ストレスの職員には、県産業医による面接指導を早期に行っている。
  • 導入後も、実施回数・質問項目の見直しを行い、改善に努めてきている。
  • 平成26年度からは、職場ごとの分析結果を活用し、職場の環境改善に取り組んでいる。
  • これらの取り組みにより、ストレス度の高い職員数は減少傾向にあり、健康障害の発生するリスクが危険ラインを超える所属数も、平成26年度に比べて、27年度は減少しており、一定の効果があると考えている。
  • 引き続き、ストレスチェックを活用した、効果的なメンタルヘルス対策に取り組んでまいる。

【教育長答弁】

  • 県教育委員会では、メンタルヘルス対策として、精神科医等によるカウンセリングをはじめ、複数の窓口による相談体制を構築するとともに、管理職や中堅職員を対象にストレスマネジメント研修を実施している。
  • これらの取組みを通して、職員が心の健康に理解を深めたり、管理職が職員の変化に気づき、声かけを積極的に行ったりするなど、メンタルの問題についての早期発見、早期対応につながっているものと考えている。
  • 今後は労安法の改正を踏まえ、ストレスチェック等を実施することで、職員自身のストレスへの気づきを促すとともに、検査結果を分析し職場環境の改善につなげ、職員がメンタル面で不調となることを更に防止する必要があると考えている。

 2点目は、本県職員と教職員の精神疾患の状況についてです。

 本県職員は、2012年度から昨年度まで、毎年、60名を超える病気休職者を出しています。なお、昨年度は65名の病気休職者でしたが、そのうち83.1%、54名が精神疾患によるものでした。

 同様に、本県の教職員は、政令市を除き、2011年度から毎年、150名から230名前後の病気休職者を出しています。なお、直近2014年度は、178名の病気休職者でしたが、そのうち、61.8%、110名が精神疾患によるものでした。

 このように、本県職員と教職員には精神疾患が多いという状況が明らかになっていますが、その発生要因をどのように考えているのか、知事と教育長にお尋ねします。

【知事答弁】

  • 主な要因について、精神疾患により病気休職となった職員や上司から、聞き取り調査を行ったところ、「上司や同僚からの支援が乏しい」などといった「仕事上の人間関係」とする回答が多く見られた。
  • 職場環境の改善が大きな課題と考えられることから、ストレスチェックの活用、職場内の協力体制の構築など、きめ細かなメンタルヘルス対策を一層推進し、風通しの良い職場環境の整備に努めていく。

【教育長答弁】

  • 教職員が精神疾患に罹患する原因については、医者の所見や本人からの聞き取りによると、生徒や保護者への対応、職場の人間関係など職務上の問題、あるいは家族の病気、介護等の個人的な問題など、様々な原因がある。
  • 教育活動の円滑な実施のためには、教職員が健康であることが基本であり、心身ともに健康に教育活動に専念できるよう引き続きメンタルヘルス対策の効果的な実施に取り組んでまいる。

 3点目は、市町村立学校の教職員へのストレスチェックの導入についてです。

 ストレスチェックは、県立学校では、教職員が50人未満の学校も含め、全教職員を対象に来年度から実施する方向で検討中です。

 しかし、市町村学校では「設置者が市町村だから」との理由で、市町村の判断に委ねられており、ほとんどの市町村で実施されていないと聞いています。

 そこで、任命権者である教育長が、責任をもって、市町村立学校の教職員に対しても、ストレスチェックを実施すべきと考えますか、教育長の考えをお聞きします。

【教育長答弁】

  • 国の指導では、市町村立学校における安全衛生管理体制の整備は、市町村教育委員会にその責務があるとされている。したがって、市町村立学校のストレスチェックについては、学校の設置者である市町村で実施されるものと考えている。
  • 県教育委員会としては、今後とも市町村教育委員会に対し法改正の趣旨やストレスチェックの必要性について、周知徹底を行い、適切にストレスチェックが実施されるよう、働きかけを行ってまいる。

 この項の最後に、本県と福岡労働局との連携による労働環境の改善についてお聞きします。
 先の6月議会で、我が会派の代表質問に対して、知事は「福岡労働局と連携して、効率的な働き方による時間外労働の削減や休暇の取得促進について労使団体や企業トップへの働きかけを行う。」と答弁されました。その後、さる10月22日、本県と福岡労働局とで「雇用対策協定」が締結されました。

 この協定では、地域における雇用創出と人材確保、女性・若者・中高年齢者・障がい者の活躍促進、公的職業訓練を活用した能力開発、雇用環境の改善の4項目を重点施策と位置付け、今後、この重点施策に基づく事業を展開するとしています。

 そこで、この協定を活かして、民間事業者に対して、労働者の心の健康の保持増進を促進するべきだと思いますが、知事の考えをお尋ねします。

【知事答弁】

  • 県では、労働環境の改善のため、国と連携し、長時間労働の抑制、休暇の取得促進など、働き方の見直しに向けて、企業への働きかけ、企業経営者を対象としたセミナーなどを行ってきた。
  • 本年10月には、更に連携・協力して労働関係施策を推進することを目的に、「福岡県雇用対策協定」を締結した。
  • この協定では、ともに取り組むべき施策の一つとして雇用環境の改善を設定しており、今般施行されたストレスチェック制度についても、県・国が相互に協力してそれぞれの取組みを周知するなど、労働者の心の健康の保持増進に積極的に取り組んでまいりたいと考えている。

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