県議会質問

2018年3月8日

 さて、話を戻しますが、幕末期、黒田藩・佐幕派による勤皇派弾圧・処刑が、結果的に明治政府の福岡弾圧へとつながることになります。そして、明治維新後は薩長の専制政治が蔓延し、それが士族の反乱へとつながり、「西南戦争」を経て自由民権運動・国権主義を掲げる「玄洋社」の誕生へとつながっていくことになります。

 そして、「玄洋社」はアジア主義へと傾倒し、孫文の支援へとつながり、中国革命へと歴史の系譜はつながっていきます。孫文の革命運動を支えたのは、ほかならぬ気骨ある福岡藩士の生き残りであり、「玄洋社」その人であったのです。

 我が国においては、小中学校、高等学校においては、日本史はだいたい幕末か明治維新で終わり、その時も、坂本龍馬、高杉晋作、勝海舟、吉田松陰、西郷隆盛、伊藤博文といった有名人の話で終わります。

 したがって、幕末期の黒田藩や諸藩の動向、明治期の福岡県の史実について、県民に広く知られておらず、そのことが「福岡は明治維新とは関係が無いと」思われているのではないでしょうか。

 明治維新にあたり、我が福岡県にも明治維新に関する史跡は多数あり、多くの人々が関係しました。福岡市中央区の県営「西公園」には平野國臣(ひらのくにおみ)の像が建っていますし、平尾には野村望東尼の居宅であった「平尾山荘(ひらおさんそう)」が残っています。

 宗像市には早川勇(はやかわいさむ)の像が「明治百年事業」で建立されており、佐藤栄作元総理の手跡(しゅせき)が残っています。また、太宰府天満宮「延寿王院(えんじゅおういん)」には「五卿遺跡(ごきょういせき)」碑のほか、山門前には「七卿西竄(しちきょうせいざん)」記念碑があり、北九州市八幡西区黒崎には「五卿上陸の碑」が建っており、宗像市赤間には「五卿西遷之碑(ごきょうせいせんのひ)」が残っています。

 更に、福岡で最後に築城された宮若市の「犬鳴御別館(いぬなきごべっかん)」、筑紫野市には「月形洗蔵幽閉の地」の碑、朝倉市には「穂波半太郎殉職之趾(のあと)」碑、小郡市には「彼岸土居古戦場(ひがんどいこせんじょう)」跡の碑、糸島市には「野村望東尼像」と歌碑が建立されています。

 このように、県内各地に幕末期から明治維新期に歴史に痕跡を残した偉人、先達者たちの足跡が各地に多く残っています。

 昨日の一般質問では、自民党の片岡議員が明治日本の産業遺産に関連して質問されましたが、本県内の構成遺産は、いずれも明治の殖産興業以降、明治中期から後期以降につくられたもので、残念ながら、本県においては幕末期から維新期、明治中期までは歴史の空白期になっています。

 そこで以下、質問致します。

 福岡県といっても、黒田藩だけではありません。幕末から維新期、いわゆる県内には6藩あったわけですが、それぞれの藩が幕末、「御一新」、「廃藩置県」の時期に何が起こっていたのか、それぞれ地域の歴史家のお力も借りながら歴史化すべきだと思います。

 地域における偉人の功績を明らかにし、広く知らしめていく顕彰活動は、地域の青少年育成のみならず、まちづくり・地域振興など、本県にとっても意義があるものだと考えますが、このことについて知事のご所見をお聞かせください。

【小川知事答弁】

  • 幕末・維新期の偉人をはじめとする地域の先達について、その功績を明らかにし、県民に広く知らせていく顕彰活動は、自分たちの歴史や文化に関心を持ち、ふるさとに対する愛着が増し、誇りが持てるという効果が期待できる。
  • このように郷土への愛着と誇りを育むことは、地域で活躍する人材の育成に寄与すると考える。
    • また、地域の歴史や文化を新たな観光資源として活用することで、地域振興につなげていくこともできると考える。

 次に、郷土史教育について、教育長にお聞きします。
 福岡県における歴史の空白期ともいわれている幕末から明治中期までの歴史について、本県独自の視点から発掘、記録し、体系化することが必要だと考えます。

 「明治維新150年」にあたり、本県としても記念すべき事業を取り組むべきだと考えますが、教育長の見解をお聞かせください。

 更に、現在、小中学校においては「学習指導要領」において「郷土の歴史、郷土の偉人」については授業として取り上げられています。

 この件については、今議会、緑友会の代表質問でも取り上げられましが、それぞれの地域、いわば旧藩時代の歴史、郷土の偉人、先達者など、郷土の歴史を次代に引き継ぐための教育を進めているのか、改めてお聞きします。

 加えて、公立高校についてもお聞きします。
 公立高校においては「学習指導要領」で「郷土の歴史を取り上げる」ことがあまりないこと、また、大学受験の日本史では、いわゆる通史が取り上げられるということから、郷土史が授業で取り上げられることはあまりないと聞いています。

 県内には、黒田藩の修猷館、柳川藩の伝習館、小笠原藩の育徳館、久留米藩の明善堂と、藩校時代の歴史を引き継ぐ高校もあることから、この際、1年次、2年次に、それぞれの公立高校が所在する地域の郷土の歴史を学ばせるというのは必要なことではないかと思います。このことについて、教育長の見解をお聞きします。

A

【城戸教育長答弁】
問:「明治維新百五十年」の取組みについて

  • 県教育委員会では、平成25年度に、九州歴史資料館において幕末期の太宰府に関する企画展を開催した。現在は、県立図書館の郷土資料コーナーにおいて「福岡の幕末維新」についての関連図書を紹介する取組みを行っているところである。
  • 今後とも、市町村や郷土の歴史を研究している団体等と連携しながら、取組みを進めてまいる。

問:小中学校における郷土史教育について

  • 小中学校においては、社会科や道徳、総合的な学習の時間などで身近な歴史上の人物を取り上げ、先人の働きへの理解と尊敬の念、郷土の歴史に対する愛情などを深めている。
    • こうした学習に活用するために、多くの市町村教育委員会で作成されている郷土資料においては、例えば、、など、それぞれの地域にゆかりの深い人物が取り上げられている。

問:高校における郷土史教育について

  • 高校では、学習指導要領に基づき、地理歴史科などの授業において、世界の歴史と関連付けながら我が国の歴史の展開を大きくつかませることになっている。
  • その上で、学校設定科目やホームルーム活動、部活動において、地域社会の歴史や先人達の業績などに関する探究に取り組んでいる学校もあり、今後とも、このような活動を通じて高校生の郷土の歴史についての興味・関心を喚起してまいる。

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