Ⅱ 視察報告

4.京都市立「御所南小学校」(京都市中京区柳馬場通夷川上ル五町目242)

 今回、最後の視察先は、京都市立「御所南小学校」でした。

(1) 京都市立「御所南小学校」の概要

 同校は、京都市中心部の児童数減少にともない、1995年(平成7)4月、近隣の小学校5校を統合して開校され、今年度で開校22年を迎えています。
同校のある地域は、「京都御苑」といった歴史的建造物や、「鴨川」などの自然環境に恵まれ、また伝統産業や伝統文化に携わる方々など、周辺環境にも恵まれており、子どもが心身ともに豊かに育つ環境が備割っています。
 校舎には、オープンスペースが設置され、学級の枠をはずした活動も多く行われています。体育館やプール開放型の施設があるのも特徴の一つです。
1997(平成9)年度~1999(平成11)年度の3年間、文部科学省研究開発学校の指定を受け、総合的な学習を柱とした教育課程の研究を行い、地域とのかかわりも深まってきました。
2000(平成12)年度~2001(平成13)年度の2年間は、同研究の継続指定となり、新しい教育課程の実施に向け、教科と総合的な学習との関連を探っています。
 2002(平成14)年度からは、文部科学省「新しいタイプの学校運営に関する実践研究」の指定を受け、コミュニティ・スクールの在り方を研究しています。この3年間の研究の中で、「学校と地域の連携」として、「御所南コミュニティ」を構成し、地域・家庭・学校が連携・協働してカリキュラムづくりや取組の評価を行っています。この「御所南コミュニティ」こそ、同校の最大の特徴です。
 2004(平成16)年11月、「京都市教育委員会」から学校運営協議会を設置する学校として指定を受け、これまでの研究の成果を踏まえ、「夢がひろがる地域の学校」、いわゆる「コミュニティ・スクールの創造」を行っています。
 2006(平成18)年度から「京都市小中一貫教育特区」の認定を受け、「高倉小学校」、「京都御池中学校」の3校で小中一貫教育を研究、推進しています。そして、その柱は、読解力の育成となっています。新教科「読解」を中心に、各教科等で読解力に視点をあてた授業が展開されています。
 その読解力に加え、考え方や考えの道筋を表すことに重点をおいた「思考表現力」の育成、思考表現力を活用した生活科・総合的な学習の展開が研究され、子どもたちの「探究力」をも育もうとしています。

(2) 現地対応者

御所南小学校.jpg 今回、ご説明、学校案内を頂いたのは以下の方です。

  • 学校長  竹内 知史 氏

(3) 学校の特色:京都一、入学希望者の多い小学校

 「御所南小学校」は、日本に7つしかない、旧文部省認可の「コミュニティースクール」の認定を受け、その取り組みの成果として民間の学力テストでトップクラスの成績をあげました。
 こうした取り組みが評価され、2003年11月1日放映のNHKスペシャルで「日本一の小学校」と紹介されてから、一躍、全国の有名校になりました。そのため、「御所南小学校」への入学を目的に、わざわざこの地区に引っ越ししてくる家族も多いそうです。
 また、同校の特色の一つに、成績優秀な子であっても私立中学を受験せず、地元の公立中学校へ通う率が極めて高いということです。これは、「京都市小中一貫教育特区」の認定を受け、「御所南小学校」と「高倉小学校」と「京都御池中学校」の3校で小中一貫教育を研究、推進していることにもより、小学校に通っているうちに「御池中学」への愛着も生まれ、先輩とのつながりもでき、「コミュニティースクール」による地域の方々との人間関係もでき、地域の方々が見守ってくれるということにあるそうです。

(4) 「御所南コミュニティ」

①「御所南コミュニティ」とは
 「コミュニティ・スクール」とは、簡略的にいうと、教育行政が自らの所管の公立学校の運営や改革について手が回らないところを、地域の住民の方々に積極的にかかわってもらい、学校運営の一部を任せる形態のことを言います。文部科学省によって地域指定され、各教育委員会が実践しています。
 地域学校協議会「御所南コミュニティ」もその一つで、地域・家庭・学校の連携・協働を目指し、コミュニティスクールのあり方が研究され、実践されてきました。
 「御所南小学校」は9つの学区が統合した学校であり、地域の団体代表者も9人ずつおられます。こうした地域の豊富な人材を生かし、2002(平成14)9月、地域学校協議会「御所南コミュニティ」が創設されました。
 「御所南コミュニティ」は、「地域」・「幼少中」・「スクール」の3つの委員会で構成され、毎年、地域の方々と学校が連携し、様々な取り組みが行われ提案すが、その基本にあるのは「学校が大好き !、御所南のまちが大好き ! という子どもたちの声が響く学校をつくり、将来のよき町衆(市民)を育てよう」というものです。
 すなわち、「地域と家庭と学校が手を取り合い、子どもたちの笑顔が輝き、みんなの夢が広がる学校を目指す」というものです。

②「御所南コミュニティ」設置の経過
 2002(平成14)年度に「御所南地域学校協議会」としてスタート、2004(平成16)年11月に「京都市教育委員会」から「学校運営協議会」を設置する学校として指定され、2005(平成17)年5月20日に「御所南小学校学校運営協議会」が発足しました。これまでの「御所南コミュニティ理事会」を「学校運営協議会」として発展させるとともに、理事会以外のメンバ-を「企画推進委員」とし、今までの成果を生かしながら、学校運営に参画できる組織として再編されています。

③「御所南コミュニティ」の会
 「御所南コミュニティ」は、地域保護者102名のコミュニティ委員に教職員も加わり、3委員会と12の部会、総勢147名で構成され、それぞれの委員会や部会で楽しく豊かな学びになるようにと工夫した内容が考えられています。
 「御所南コミュニティ」の会は、年に6回定期的に行われ、授業や事業を企画したり、また学校教育活動に対し評価をしたりし、次代の子どもたちをどのように育てていくのか、活動を通して考える会となっています。

 本校は,平成 18年度から京都市小中一貫教育行政特区の認定を受け,平成 20年度からは文部科学大臣指定の小中一貫教育校として,京都御池中学校と高倉小学校とともに小中一貫教育に取り組んでいます。3校とも学校運営協議会を設置する学校として指定されており,小中一貫コミュニティ・スクールを創造しているところです。

④「学校運営協議会」と「御所南コミュニティ」の組織
 2004(平成16)11月、京都市教育委員会は「学校運営協議会を設置する学校」として指定しています。同校はこれを受け、これまでの地域学校協議会「御所南コミュニティ」と「学校運営協議会」の関係を次のように考えています。

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 具体的に、「学校運営協議会」と「御所南コミュニティ」の組織とは、

1) 地域学校協議会「御所南コミュニティ」は、児童をどのように育てていけばいいのかという視点から、12の「コミュニティ」(小グループ)に分けられています。

・文化コミュニティ
・福祉コミュニティ
・スポーツ・コミュニティ
・町づくりコミュニティ

・国際コミュニティ
・ジュニア・コミュニティ
・コンピュータ・コミュニティ
・図書館コミュニティ

・学びコミュニティ
・表現コミュニティ
・健康コミュニティ
・環境コミュニティ

2)学校内視察

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 教室は、オープンスペースとなっており、〝部屋ごとに仕切られた教室〟のイメージとは大きく違っていました。

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 地域学校協議会「御所南コミュニティ」で取り組んだ児童の作品です。
 それぞれの学年や教室ごとに課題を自分たちで決め、自から地域を歩き、祭りや伝統工芸などを地域の方から学び、それをまとめて作品にし、発表したものです。

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 「読書の木」が廊下におかれており、子どもたち一人ひとりが自然に読書の習慣が身に付くようにしています。授業では、自分の考えをしっかりと表現することを大切にしています。正面玄関には、生徒の作品が飾られており、京都の歴史、自分たちが住んでいる地域の歴史・文化・伝統を大切にする心を育んでいます。   

3)小中一貫教育の実践
小中一貫教育の実践.jpg 「御所南小学校」は、「高倉小学校」と「京都御池中学校」の3校で小中一貫教育が行われています。
 小学校6年生になると、「京都御池中学校」に通い、中学生と一緒の校舎で勉強します。
 もともとは〝中1ギャップ〟を無くすということから始まったのですが、小学6年生にとっては、中学生になってどんな学校生活を送るのか不安があるところを、制服姿に慣れたり、お兄ちゃんやお姉ちゃんから面倒を見てもらいながら、おのずと〝中学生(になる)〟という自覚が育つといいます。
 また、中学生にとっては、妹や弟のような存在の後輩が入ってくることで、自然と面倒を見たり、中学校の学校生活を教えたり、時には注意するなど、〝先輩〟としての自覚や指導力を養うことが出来るそうです。
 そのため、小学6年生にとっても、中学生にとっても、互いに相乗効果もあり、良い影響を与えているそうです。 

4)まとめ
 「御所南小学校」は前述のとおり、NHKスペシャルで「日本一の小学校」と紹介され、一躍、全国の有名校になったということですが、紹介されるには理由があるということです。
 「コミュニティースクール」として文科省の認定を受けたことにより、京都市教育委員会・学校側・地域との連携がうまくとれ、「御所南コミュニティ」という独特の取り組みが行われています。
 それにより、子どもたちは学校内だけの学習だけではなく、地域とのつながりにより、教科書には載っていない、学校では教えない地域の歴史、文化、学術、芸能、市民生活の広範囲にわたり、地域の人たちと一緒に学ぶことが出来ることになります。
 そのことが、子どもたちに活力や生きる力を与え、学ぶ意識を高めるとともに、いじめをなくし、不登校を減らす結果にもつながっており、学習能力の面では「全国学力テスト」ではずば抜けた成績を続けています。
 「御所南小学校」の取り組みが、どこの小学校でも同じようにできるとは限りません。しかし、良き先進事例、指針として取り上げることが出来ると思います。