県議会質問
2015年10月29日 第6款 農林水産部(質問・答弁)
本県農林行政に対するツマアカスズメバチ対策について
民主党・県政クラブ県議団の原中まさしであります。「本県農林行政に対するツマアカスズメバチ対策について」質問いたします。
昨日、私は、環境部に対して「特定外来生物対策について」質問しました。そのとき、「ツマアカスズメバチ」の生態ならびに環境に与える影響について話をいたしました。
そこで、本日は、改めて「ツマアカスズメバチ」が農林行政、具体的には農作物に与える影響を取り上げ、質問することといたします。
お隣の韓国では、「ツマアカスズメバチ」が最初に確認されたのは2003年、プサンでありましたが、中国から貨物船により侵入したと考えられています。その後、わずか4〜5年で韓国全土に生息が広がったといわれています。
そして、生息域の拡大とともに個体数が急激に増加し、在来のスズメバチは激減、いわゆる駆逐され、いまや「ツマアカスズメバチ」が優占種となっており、韓国国内では短期間で生態系が変わっています。
また、「ツマアカスズメバチ」は、本来、東南アジアに分布していた種ですが、2005年にフランスでも確認されました。それ以降、ヨーロッパで急激に生息域を拡大し、2010年までにフランス南部から西部、スペイン北部までの広い地域に広がり、現在ではポルトガル、ベルギー、ドイツにまで達しています。
いずれにせよ、東アジアでも、ヨーロッパでも、侵入地では侵略的外来種として生態系への影響が問題となっています。
話は変わりますが、2006年秋、いまから9年前、アメリカやヨーロッパでミツバチがこつ然と消える事件が起きました。翌2007年までに、北半球のミツバチの4分の1、300億匹という膨大な数のミツバチが消えたのです。科学者たちはこの異変を「蜂群崩壊症候群(CCD)」と命名しました。日本では、ミツバチの「いないいない病」として大きく取り上げられました。
アメリカでは農作物の3分の1をミツバチの受粉に頼っているだけに、食糧高騰に拍車がかかると世界的に危機感が高まりました。
ここに「ハチはなぜ、大量死したか?」という書籍がありますが、この本は、このミツバチ失踪事件を受けて書かれた本です。
ミツバチ失踪について、科学者は様々な原因を挙げていますが、実は、そのなかに「ツマアカスズメバチ」は入っていません。
すなわち、ミツバチ大量失踪の要因に「ツマアカスズメバチ」が加わると、ミツバチ消失にさらに拍車がかかるということです。
お隣の韓国では、国内で「ツマアカスズメバチ」の生息が確認されてから、わずか一月足らずでミツバチ300群のうち、6分の1が消滅したと報告があります。
また、今回視察した対馬市では、初めて「ツマアカスズメバチ」が発見されてから、わずか3年足らずの間に、ミツバチの個体数は3分の1まで減少し、ハチミツの量は最盛時の5分の1にまで激減しているそうです。
「ツマアカスズメバチ」は蜂洞、すなわちミツバチの巣箱の周りでホバリングして待機し、採ミツからもどってきた、いわば腹いっぱいミツを吸って動きの鈍いミツバチを捕食するということから、当然、ハチミツの量も減ってきます。
そして、巣箱のミツバチも、ミツの採取に飛んでいけず、巣箱を守ることに神経をとがらせるわけで、大変なストレスがミツバチにかかるわけです。
こうしたミツバチのストレスからも、ミツバチの個体数の減少につながっていると指摘されています。
ただ、ミツバチの個体数の減少は、 「ツマアカスズメバチ」がミツバチを捕食したことだけが原因ではなく、ネオニコチノイド系殺虫剤、さらにはミツバチに寄生するミツバチヘギイタダニの影響があると考えられています。
いずれにせよ、養蜂業に与える影響は甚大なものと考えますが、それだけではありません。農作物の収穫に与える影響も甚大です。
今日、世界の農作物の約3分の1はミツバチが受粉の手助けをしているといわれています。そのため、ミツバチを捕食する「ツマアカスズメバチ」が勢力を拡大すると、当然、養蜂業のみならず、農作物の収穫に大きな影響を与えます。
私たちが毎日食べている野菜や果物の多くは、ミツバチの授粉のおかげで実りをつけており、ミツバチによって受粉されなければ、その命をつなぐことができず、地上から姿を消していくことになります。
食糧には農作物、畜産物、水産物がありますが、2011年の「国連環境計画報告書」によれば、「世界の100種類の作物のうち、70種以上はミツバチが受粉を媒介している」との報告を出しており、人類の全ての食料のうち、3分の1はハチなどの生物の受粉によってつくられているといいます。
かのアインシュタインは、「ミツバチが絶滅したら4年後には人類も滅びているだろう」と警鐘を鳴らしていますが、その真実はともかく、万が一、ミツバチが絶滅すれば食糧不足で人類もまた滅亡する可能性がないとは言い切れません。
いずれにせよ、「ツマアカスズメバチ」が農産物に与える影響は大変大きなものがあります。
そこで、この「ツマアカスズメバチ」に関し、本県の農産物に与える影響と対策について、以下、質問します。
1.まず、農林水産部として、「ツマアカスズメバチ」の存在について、どのような認識をお持ちなのか、お答えください。
併せて、「ツマアカスズメバチ」が養蜂業や農産物に与える影響について、どのような認識をお持ちなのか、お答えください。
【園芸振興課 課長答弁】(案)
- このハチは、中型のスズメバチで、繁殖力が強く、ミツバチの巣の周りで働きバチを襲うことから、生息域が広がればミツバチの減少が懸念されると聞いている。
- 農林水産部としては、ツマアカスズメバチが定着し、著しく数が増えたら、養蜂業に影響を与えるだけでなく、ミツバチで受粉を行う果樹や野菜に対しても影響が出ると考えられる。
2.本県の、主な果樹品目にはどのようなものがあるのかお答えください。
【園芸振興課 課長答弁】(案)
- 栽培面積が大きいものから、柿、温州ミカン、ブドウ、ナシ、キウイフルーツ、いちじく、モモ、スモモなど。
3.本県の農産物のうち、果実(くだもの)、、などの野菜で、ミツバチの受粉で実がなるものはどのようなものがあるか、お答えください。
【園芸振興課 課長答弁】(案)
- 果樹では、柿の全て、及びナシ、スモモ、リンゴの一部が該当し、これは、果樹の栽培面積全体の3割程度にあたる。
- 野菜では、イチゴ、ナスが該当し、花を咲かせ実を結ぶ果菜類の面積の4割にあたる。
4.本県で生産される果実(くだもの)、野菜など農産物について、仮にミツバチによる受粉がなくなった場合の影響について、どのようなことが想定されるかお答えください。
【園芸振興課 課長答弁】(案)
- ミツバチの利用を前提とした現行の栽培方法の見直しが必要。
- 代替方法としては、イチゴではマルハナバチという市販の交配バチで、ハウス内に設置し利用する方法。ナスでは、イチゴと同じくマルハナバチの利用や交配しなくても実を結ぶ単為結果品種の導入。ナシやスモモでは、人工授粉が挙げられる。いずれも場合も、導入経費や労働負担の増加が想定される。
- また、自然交配となる柿では、結実や果実品質が若干低下することが想定される。
5.農林水産部として、「ツマアカスズメバチ」に対して、これまで長崎県および対馬市と情報交換、意見交換を行なったことがあるのか、お答えください。
さらには「ツマアカスズメバチ」を駆除している現場を視察するため、対馬市へ職員を派遣したことはあったのか、お聞きします。
【畜産課 課長答弁】(案)
- 長崎県の農林部と養蜂に関連した情報交換及び意見交換を行った。
- 直接、対馬市とは情報交換及び意見交換は実施していないが、長崎県から対馬市の情報を入手した。平成26年9月に長崎県と農林水産省が対馬市の現地調査を行っている。その後、長崎県が定期的に関係者からなる「蜜蜂連絡協議会」を開催し、現地の状況などを共有しているが、現在までツマアカスズメバチによる影響は不明と聞いている。
- 対馬市への職員の派遣は行っていない。
6.本年8月28日、「ツマアカスズメバチ」の巣が、福岡県内では初めて、北九州市門司区の下水処理場で見つかりました。
福岡県内で生息が確認されたいま、どのような危機感を持って施策を講じるのか、具体的な対策をお答えください。
【畜産課 課長答弁】(案)
- 北九州市からの報告を受け、直ちに養蜂農家に情報提供し、注意を喚起した。
- 今までに、県内養蜂場において被害の発生や巣を発見したという事例はない。
- 県環境部が開催した「ツマアカスズメバチ対策会議」に参加した。発見した時の対応を養蜂農家に直ちに伝えた。
- 今後も、養蜂農家に対し研修会を開催するとともに、情報提供を行い、緊張感をもって環境部と連携する。
7.加えて、果樹農家、野菜農家の方々への情報提供、警告、対策に向けた啓発などが大切になりますが、こうした農家の方々への対策をどのように進めるのか、お答えください。
【園芸振興課 課長答弁】(案)
- 生息が産地にまで広がれば、品目にもよるが、これまでに作り上げてきた栽培方法の見直しが必要となり、生産費や労働負担の増加も伴うことが想定される。
- したがって、早期発見・早期駆除の徹底が最重要と考えており、園芸農家に対しても、ツマアカスズメバチの生態等についての周知を図り、所有するミツバチの巣箱等で発見した場合は速やかに報告する体制を整備している。
8.これは、環境部でも質問しましたが、「ツマアカスズメバチ」の繁殖力、生息域拡大のスピードを考えた場合、山口県、佐賀県や長崎県、大分県など、北部九州・山口各県の農林水産関係の部署との連絡、連携が必要となってきます。
今後、関係県でどの様に連携していくのか、お答えください。
【畜産課 課長答弁】(案)
- 関係県とは今後も連携していくとともに、隣接県とも情報を共有していく。
- 具体的には、山口県、佐賀県など隣接県と定期的に開催している「県境家畜防疫会議」で情報交換していく。
- 特に、長崎県とは今後も密に連携していく。
9.最後に、「ツマアカスズメバチ」対策に向けた部長の決意をお聞きします。
【農林水産部 部長答弁】(案)
- ツマアカスズメバチの生息域拡大による本県農林業に与える影響に鑑み、いま関係課長が答弁述したとおり、しっかりと対策を行う。
A
※上記、農林水産部所管の質疑応答については、前日に質問通告を取り下げたため、実際には「決算特別委員会」での質問ならびに答弁のやりとりはありませんでした。したがって、上記の内容については公式な議事録として残されたものではありません。
A
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