県議会質問

2015年11月4日 総括質疑(総務部・環境部)

本県のSPEEDIに対する基本認識と対応について

 民主党県政クラブ県議団の原中まさしであります。発言通告に従い、「本県のSPEEDI(スピーディ)に対する基本認識と対応について」質問致します。

 「原子力規制委員会」は本年4月22日の定例会合で、「原子力災害対策指針」を改正し、原子力発電所の事故の際に放射性物質の拡散を予測する「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」、いわゆる「SPEEDI」を活用しないとする基本指針を示しました。

 これまでの指針では、「SPEEDIのようなシミュレーションを活用した手法で、放射性物質の放出状況の推定を行う」としていましたが、今回の新指針では、「SPEEDIでは正確な予測は困難と判断した」として、「SPEEDI」に関する文章もすべて削除されています。

 規制委員会の更田豊志(ふけたとよし)委員長代理は「予測ができればいいという願望があるが、それができるというのは安全神話だ。願望に頼って住民の健康に及ぶ判断をするのは極めて危険」と話すとともに、「原子力発電所の事故の際、半径30キロ圏外の避難は事故後に規制委員会が判断する」として、「SPEEDIを避難判断の参考にも使わない」ということを改めて示しました。

 その後、政府は本年7月、「原子力規制委員会」が「SPEEDIを避難判断の参考にも使わない」ということを受け、国や自治体の災害対応の基礎となる『防災基本計画』を改訂し、今後、住民の避難に「SPEEDI」を活用しないことを決めました。

 これまで、「SPEEDI」は、原子力発電所の事故の際、放射性物質の拡散を予測する手段として有効であるといわれていましたが、今回、「原子力規制委員会」、国ともに「SPEEDI」を活用しないと打ち出したわけであります。

 我が会派は、2013年11月、太宰府市にある「県保健環境研究所」を視察し、「SPEEDI」の活用について、県側から説明を受けたところであります。

 また、2014年3月の『2月定例会』では、我が会派の代表質問で「SPEEDIの活用について」質したところ、小川知事は「国が公表している平常時のSPEEDIの拡散予測は、特定の日時の気象条件等限られた条件で作成されたものであるが、そうした前提を県民の皆さんに十分説明した上で、提供していくことは非常に有意義であると考えている。」と答えられています。

 そして、本県では、「玄海原子力発電所で万が一大規模な原子力災害が発生した場合の広域避難計画についてはSPEEDIを活用する」との明確な知事答弁が出されているわけであります。

 したがって、国の「SPEEDI」外しについては、本県の「福岡県地域防災計画 原子力災害対策」ならびに「広域避難計画」に重要な影響を与えるものと思います。

 そこで、以下、「本県のSPEEDIに対する基本認識と対応について」質問します。

1.本県は、太宰府市にある「県保健環境研究所」に「SPEEDI」を設置していますが、それはどのような目的によるものなのか。

 また、「SPEEDI」は何年に設置し、設置費用はどれくらい掛かったか。そして、これまでどれくらいの運営費がかかっているか、お答えください。

【環境保全課 課長答弁】

  • 「SPEEDI」は、原子力発電所から放射性物質の放出の恐れがある緊急時に、気象条件や地形データ等をもとに、周辺における放射性物質の大気中濃度や被ばく線量を迅速に予測するシステム。このシステムは国が一括運用しており、各自治体が導入した受信端末と国のコンピューターをつなぐことで、予測結果を入手することが出来た。
  • 国が定めた原子力災害対策指針において、避難等の防護措置の判断は実測値に基づき行い、「SPEEDI」による大気中の放射性物質の拡散予測結果をその参考情報とすることとされた。このことから、原子力発電所が立地する自治体と、防護措置を準備する区域(UPZ)を有する周辺自治体に「SPEEDI」が整備され、本県においても平成24年度に整備された。
  • 費用については、設置費が1,500万円余、運営費が平成24年度から平成26年度までの3年間で、合計2,500万円余、その全てが原子力発電施設等緊急時安全対策交付金により措置される。

2.本県は「玄海原子力発電所」の事故を想定した「原子力防災訓練」を実施していますが、その際、「SPEEDI」はどのように活用されていたのか、お答えください。

【防災企画課 課長答弁】

  • 原子力防災訓練では、国の指針や県地域防災計画等を踏まえ、避難等の防護措置の判断は実測値に基づき行うこととしている。
  • このため、原子力防災訓においては、直接「SPEEDI」を訓練種目として使用していないが、「SPEEDI」の使用技術の習熟を図るため、訓練に合わせて拡散予測図形を作成し、公表している。

3.今年4月、「原子力規制委員会」の新指針から「SPEEDI」の活用が消え、国の『防災基本計画』からも「SPEEDI」が外されました。

 国がやめるということで、本県のモニタリングの体制が今後どうなるのか、また、どのような対応が必要となるのか、お答えください。

【環境保全課 課長答弁】

  • 現在、県内9ヵ所にモニタリングポストを設置し、放射線量の常時監視を行っている。また、緊急時には機動的に測定を行って、モニタリングポストを補完できるよう、糸島市庁舎と県の施設28ヵ所に計40台の携帯型測定器、サーベイメーターを配備し、県内全域における放射線の影響を把握する監視体制を整備している。
  • また、玄海原子力発電所の立地県である佐賀県や、長崎県との間では、緊急時支援用放射線モニタリング情報共有システム(ラミセス)を導入し、情報を共有する体制を構築している。
  • これらのモニタリング情報は、県のホームページ「ふくおか放射線・放射能情報サイト」において、常時、佐賀県や長崎県等の近隣県を含む各測定地点の放射線量や、風向・風速などの情報を地図上にリアルタイムで表示し、県民の皆様へわかりやすい情報提供を行っている。
  • 今回、国は、福島第一原子力発電所事故において得られた教訓として、放射性物質の正確な拡散予測に必要となる放出情報や風向・風速等の気象情報を、正確に予測することは不可能であるということから、緊急時に「SPEEDI」の予測結果を参考情報とした避難等の防護措置の判断を行わないこととした。
  • このため、原子力災害対策指針が改正され、防護措置の判断にあたって、「SPEEDI」による予測結果は参考情報に用いず、緊急時モニタリングの実測値に元図いて行うこととされている。この方針を受け、本県では、迅速かつ詳細に実測値を得るため、本年度中に新たに糸島市内7ヵ所に緊急時用の固定式電子線量計を設置する予定。また現在、実測値によるモニタリング体制の更なる強化が国において検討されている。この動向を踏まえ、今後も緊急時モニタリング体制の充実強化に努める。

4.「原子力規制委員会」や国は、原子力発電所事故の場合の住民避難から「SPEEDI」の活用を外すことにしましたが、原発立地県や立地自治体、そして、近隣自治体からは「事故への備えが不十分」との懸念の声が出されています。

 福岡県は原子力発電所の立地県ではありませんが、「玄海原子力発電所」から、糸島市街地まで30km、福岡市の中心地まで50数kmの近さにあります。

 そこで、今回、原子力発電所事故の際の避難指示を出す際の判断材料から「SPEEDI」が外されたということで、今後、県はどのような判断基準、判断材料で避難指示を出すお考えなのか、お聞かせ下さい。

【防災企画課 課長答弁】

  • 県では、国の原子力災害対策指針を踏まえ、地域防災計画及び広域避難基本計画において、玄海原子力発電所で大規模な原子力災害が発生した場合、UPZ内では、まず原則として屋内退避し、次に放射線量の実測値が基準を超えたときに、基本的に国の指示に基づき、避難することとしている。

5.次に、今後、本県の「福岡県地域防災計画 原子力災害対策」の見直しはあるのか、お答えください。

【防災企画課 課長答弁】

  • 本年4月、国は、原子力災害対策指針の改定を行い、避難等の防護措置の判断にあたって、「SPEEDI」の予測結果は、明確に使用しないこととした。
  • しかしながら、避難ルート等の事前の検討や避難尾準備などには、放射性物質の拡散を予測する情報も重要と考えられるため、「SPEEDI」等の何らかの予測手法を活用する仕組みを構築するよう、全国知事会を通じて国に要望している。
  • 県地域防災計画の見直しについては、国の予算措置などの動向を踏まえ、対応したいと考えている。

6.最後に、総務部長にお尋ねします。
 国の「SPEEDI」外しが決まった今、今後、本県の「原子力防災対策」をどうしていくべきと考えるのか、部長のお考えをお聞かせください。

【総務部長 答弁】

  • 県としては、引き続き、緊急時モニタリング体制の充実強化を図るとともに、避難ルート等の事前の検討や避難の準備にあたり参考とするため、「SPEEDI」等の何らかの予測手法を活用する仕組みを構築するよう、全国知事会を通じて国に要望していく。

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