Ⅱ 視察報告

5.北海道登別「明日(あけび)中等教育学校」

明日(あけび)中等教育学校2.jpg 次の訪問先は北海道登別「明日(あけび)中等教育学校」でした。

この学校は中・高の一貫校です。学校・家庭・地域社会が連携し、6年間の一貫教育を行うことで、高い知性、豊かな人間性、健康な心身、郷土愛と国際性を身に付けた、本道の将来を担う人材の育成を目指すとされています。

(1)担当者
○学校長 河原 範毅氏
 副校長、教頭

明日(あけび)中等教育学校1.jpg(2)学校の概要
 「学校・家庭・地域社会が連携し、6年間の一貫教育を行い、高い知性、豊かな人間性、健康な心身、郷土愛と国際性を身に付けた、本道の将来を担う人材の育成を目指す。」ことを学校教育目標としています。

 各学年2学級で、計12学級、総定員は480名(1学年80名)です。
 中学校3年、高等学校3年というくくりではなく、1回生(中1~2)、2回生(中3~高1)、3回生(高2~3)という学年わけがされています。

 通学区域は道内全域で、自宅から通学できない生徒のために、募集人員の20%にあたる各学年16名を(男女各8名)を収容できる寄宿舎が用意されています。
 原則として、下宿やアパートからの通学は認められておらず、そのため、朝5時ころに自宅を出て通学する学生もいるそうです(6年間!)。

明日(あけび)中等教育学校3.jpg■基礎期(1・2回生)
<学校生活の基礎・基本の確実な定着を図る>
 学習習慣や学習方法などをしっかりと身に付けます。
■充実期(3・4回生)
<主体的な学習態度を身に付ける>
 自らの興味・関心などに応じて、学習方法や学習内容を高めます。中堅学年としての役割を自覚し、充実した学校生活を送ります。
■発展期(5・6回生)
<希望進路の実現に向け、個性や能力の一層の伸長を図る>
 6年間で培ってきた力をより確かなものにします。夢の実現に向けて大きく羽ばたきます。

(3)学校の特色
 2014年度より文部科学省から「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」に指定されています。食料問題をテーマに掲げた「AKB(あけび) Future Project」の取組を通し、専門家による特別講演・ワークショップや海外フィールドワーク(オーストラリアへの派遣)などを実施し、未来のグローバル・リーダーの育成に向けた教育活動を展開しています。

【スーパーグローバルハイスクールとは】
 高等学校等におけるグローバル・リーダー育成に資する教育を通して、生徒の社会課題に対する関心と深い教養、コミュニケーション能力、問題解決等の国際的素養を身に付け、もって、将来、国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成を図ることを目的としている。
 スーパーグローバルハイスクールの高等学校等は、目指すべきグローバル人物像を設定し、国際化を進める国内外の大学を中心に、企業、国際機関等と連携を図り、グローバルな社会課題、ビジネス課題をテーマに横断的・総合的な学習、探究的な学習を行う。
 また、2009年10月、道立学校として初めて、「ユネスコスクール加盟校」に承認されています。これにより、イングリッシュキャンプ、企業での就業体験、海外見学旅行などESDに関連した教育活動が展開されています。

【ユネスコスクールとは】
ユネスコ憲章に示されたユネスコの理念を実現するため、平和や国際的な連携を実践する学校。文部科学省及び日本ユネスコ国内委員会では、ユネスコスクールをESDの推進拠点として位置付けている。 

【ESDとは】
 持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development)は、私たちとその子孫たちが、この地球で生きていくことを困難にするような問題をについて考え、立ち向かい、解決するための学びのこと。ESDは持続可能な社会の担い手を育む教育。

(4)授業視察
 各クラスの入り口には、○学年という表示はなく、1回生とか2回生とか、回生の表示がされています。
 教室は通常は30人学級ですが、科目(国語、数学、英語)によって学級が分けられ、より少人数で授業が行われます。

 また、「スーパーグローバルハイスクール」を掲げているだけに、英語力(聞く、話す、書く、理解する)を身に着けることに力が入れられています。

明日(あけび)中等教育学校6.jpg 廊下や階段に「チラベン(チラッと見て、勉強する)用紙が張ってあり、何気ない空間、時間でも子どもたちに勉強するという意識付けがされています。

(5)家庭学習
 同校の特色の一つに、「家庭学習」があります。
 これは、宿題とは別に、生徒個々人が自らの課題に応じたテーマを決め、それを自宅で学習してくるというものです。
 特に、1回生の2年間は、こうした自宅学習の習慣が徹底され、身に着けられます。うまくできない生徒には、学校(担任)から保護者に連絡が入り、学校・教師-家庭ー生徒の3者が連携しながら生活習慣の改善、学習習慣の取得に努められます。

(6)まとめ
 校内は、北海道産の木材がふんだんに使われ、温かみ、親しみ、安らぎを感じさせます。
 また、校風もあると思うが、生徒たちの自由闊達な雰囲気が見て取れます。そして、二つの回生をまとめて基礎期・充実期・発展期と3分割していることもあり、上級生が下級生の面倒をよくみるという話も聞きました。こうしたことも、生徒が学内で生き生きと学校生活を送れる要因だとも思います。
 また、生徒の主体的・自律的な学習、家庭学習の充実というのが子どもたちの学力向上につながっており、東京大学をはじめ、有名大学への進学者も多くなっています。
 以上のことから、道内全域から、この学校への希望があるというのが判る気がしました。

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