Ⅱ 視察報告

6.「アイヌ民族博物館」

アイヌ民族博物館2.jpg 最後の視察先は、白老郡白老町にある「アイヌ民族博物館」でした。
 アイヌの文化遺産を保存公開するために、1965年、白老市街にあったアイヌ集落をポロト湖畔に移設し、復元された屋外博物館です。
 5軒のチセ(茅葺の家)や博物館、植物園、飼育舎などからなり、歴史、伝統、文化が学べる施設です。

(1)担当者
○館長       野本 正博氏
○学芸係長・学芸員 八幡 巴絵氏

アイヌ民族博物館1.jpg(2) 「アイヌ民族博物館」の概要
 「アイヌ民族博物館」は、アイヌ文化の伝承・保存、並びに調査・研究、教育普及事業を総合的に行う社会教育施設として、1976年、「財団法人白老民族文化伝承保存財団」として設立されました。

 1984年には、アイヌの有形・無形文化を展示し、さらに学術的に調査・研究を行う施設として「アイヌ民族博物館」を並置・開館させ、1990年に「財団法人アイヌ民族博物館」に改称。2013年に公益法人制度改革により「一般財団法人アイヌ民族博物館」へ移行しています。

 野外博物館の性格をもつ園内は、「近代ゾーン」と「コタンゾーン」に分かれ、「コタンゾーン」にはかつてのアイヌの住家であったチセや、プ(食料庫)、ヘペレセッ(子グマの飼養檻)、チプ(丸木舟)などを復元・展示して、アイヌのコタン(集落)を再現し、チセにおいては、アイヌの歴史と文化についての解説、並びにアイヌ古式舞踊の公開を常時行っています。

 同博物館では、アイヌ民族資料5,000点、ニヴフ、ウイルタ、サミ、イヌイトといった北方少数民族資料約250点を収蔵し、そのうち800点が常設展示されています。また、関連資料として、アイヌ絵・文書約150点、図書約7,500冊を所蔵しています。

 文化伝承・保存事業として、イオマンテ(クマの霊送り)、イワクテ(物の霊送り)、チプサンケ(舟降ろしの儀式)、シンヌラッパ(先祖供養)といったアイヌ伝統儀礼を実施しています。
 また、伝統工芸の機織りやキナ(ゴザ)編み、民族衣服の製作、アイヌ文様の刺繍なども常時実施・公開していますが、さらに、アイヌ文化を単に見るだけでなく、実際に触れていただくために、ムックリ製作、アイヌ文様刺繍・彫刻、伝統料理試食などの体験学習が行われています。
 (「アイヌ民族博物館」HPより  http://www.ainu-museum.or.jp/

(3)施設視察
アイヌ民族博物館3.jpg 施設は白老ポロト湖畔にあり、「しらおいポロトコタン」と呼ばれています。
 この名の由来であるポロトコタンとは、「大きい湖の集落」という意味です。
 名の通り、湖の湖畔に集落があります。

 そして、集落の中には「ポロチセ」すわちアイヌ語で「大きい家」があります。一番大きな「ポロチセ」では、中でアイヌ伝統の歌、踊りが披露されます。歌や踊りは、素朴ながら、どこか魂に響く歌声と踊りでした。

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(4)「国立アイヌ文化博物館」の建設
 国は、2020年に国立博物館「国立アイヌ文化博物館」(仮称)を白老ポロト湖畔に開設することを決定しており、アイヌ民族博物館を含むエリアをアイヌ文化振興の「ナショナルセンター」として整備する予定です。

(5)まとめ
アイヌ民族博物館6.jpg 15~6年ぶりに再訪しました。周りの風景、施設全体はそれほど変わったというイメージはありませんが、「アイヌ民族博物館」に入ったという記憶がなく、今回、改めて博物館で勉強させて頂きました。
 アイヌの有形・無形の文化(財)が展示され、アイヌ文化の伝承がなされていました。
 野本館長いわく、「1997年5月8日に成立したアイヌ新法により、アイヌ民族への社会福祉という面では保障され、充実してきた。しかし、そのことがアイヌの日本人化を進めることにもなり、逆にアイヌのアイデンティティが失われたり、薄れる結果にもなっている。」という説明には、どこか寂しさと、危機感を感じました。

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