Ⅲ 視察報告

1.「JETRO(日本貿易振興機構)ジャカルタ」

JETRO_01.jpg 7月28日、最初の視察先は「JETROジャカルタ事務所」でした。当日は、同事務所の会議室で意見交換を行いました。    
(Summitmas I, 6th Floor, JI. Jend. Sudirman Kav. 61-62, Jakarta 12190, INDONESIA http://www.jetro.go.jp/jetro/overseas/idn_jakarta.html

JETRO_02.jpg(1)現地対応者
○JETROジャカルタ事務所次長   岡部 光利氏(右)
○JETROジャカルタ事務所上席課長 山城 武伸氏(左)

(2)「JETROジャカルタ事務所」の概要
 「JETROジャカルタ事務所」の主な活動は、以下のとおりです。
①進出日系企業のビジネス活動支援のための各種調査・情報提供事業
 インドネシアの経済・産業・企業動向、各種制度に関する情報収集・分析を行い、「インドネシアの経済概況」、「インドネシアの経済・投資・貿易の動向」等の情報を提供しています。
②貿易投資相談
 インドネシアへの進出を検討している日本企業や進出日系企業の円滑な事業活動をサポートするため、インドネシアの産業動向、サプライヤー情報、(投資法・ネガティブリストを含む)貿易投資制度、投資手続き、税務・労務問題等様々な分野について、EPA貿易/投資アドバイザーが相談に応じています。
③インドネシアにおけるビジネス活動円滑化のための環境整備事業
 日系企業がビジネスを実施する際に直面している問題、制度的障碍を調査、関係法令を早期に入手し、分析、翻訳などを行いつつ、その結果も踏まえ、当地の政府関係機関等に提言を行うなど、ビジネス環境の改善に向けた活動を行っています。

 そして、同事務所の主なプロジェクト は、以下のとおりです
①日本商品のインドネシアへの輸出支援
 分野ごとにバイヤーリストを作成し、希望の企業に提供するとともに、商談会を開催したり、インドネシアの有力な展示会への出展を支援しています。また、日本の有力展示会に対して、インドネシア企業の出展支援も行っています。
②日本・インドネシア経済連携協定(JIEPA)関連事業
 2008年7月に発効したJIEPAでは、インドネシアの産業競争力強化のために必要な協力事業が合意されています。ジェトロは日本政府の委託を受け、○自動車産業人材育成、○金型産業育成支援、○インドネシア版一村一品運動支援事業の事業を展開しています。
③インフラ支援
 インドネシアにおけるインフラ重要の高まりに対し、PPP(官民連携)事業等に日本企業が進出しやすい事業環境を整備するため、○インドネシアで必要なインフラプロジェクトの事前調査を日本国内で募集し、調査の支援を実施、○セミナー開催や要人招へい、○インドネシアのインフラマップを作成して希望の方には無料で配布するとともに、必要に応じてセミナー等を開催。
④インターンシップ派遣事業
 2012年度経済産業省から「グローバル人材育成インターンシップ派遣事業」をジェトロと(財)海外産業人材育成協会(HIDA)が委託を受け、アジアの 新興国を中心とした民間企業、政府機関等の受入機関に日本企業の若手社会人や学生をインターン生として派遣し、3~6カ月間の現場実習を通じた派遣国のビ ジネス習慣や市場を知るとともに、コミュニケーション能力の向上や人的ネットワークの形成を図っています。

(3) 「JETROジャカルタ事務所」によるインドネシアの現況説明

  • インドネシアの人口は2億5千万人、世界第4位。ASEAN諸国の全人口の4割を占める。
  • 名目GDPは8,885億ドルで世界16位。経済規模はタイの2倍を超えている。
  • 国民一人当たりのGDPは3,531ドル。3,000ドルを超えると、消費喚起がはじまり、モータリゼーションが起きる。したがって、インドネシアの市場は魅力的。ちなみに、フィリピンは3,000ドル、ベトナムは2,000ドル。
  • インドネシアの国土面積は191万931?で世界16位。13,000を超える大小の島々で構成されており、東西は5,110kmで、北米を超える。したがって、この東西の長さ、大小の島々ゆえ、物流構築が課題。島々に商品、モノを輸送するのにコストがかかる。
  • インドネシアの特徴は、多様性と寛容性にある。総人口の88.6%はムスリムだが、イスラム教は国教ではない。イスラム、カトリック、プロテスタント、ヒンドゥー、仏教、儒教から自身の新奥に従い、それぞれの神に祈ることが出来る。国語はインドネシア語だが、1,128の民族があり、745の言語がある。
  • 廉価で豊富な労働力が魅力。労働者は勤勉。ジャカルタ特別州の年収(最低賃金換算)は270万ルピア~350万ルピア、日本円で27~35万円程度(州、業種によって差がある)。
  • インドネシアには石油、天然ガス、石炭といった豊富な資源がある。しかし、2008年にOPECを脱退し、石油開発資金の調達が難しくなっている。
  • 2014年1月から「新工業法」が制定された。これにより、国内で加工・製造される製品は付加価値を付けてからしか輸出できない。しかし、国内の体制(機械、生産技術など)が追いついてない。したがって、資源価格の下落が起きている。
  • 2008年のリーマンショック以降、2009年を契機に外国投資家がインドネシアに進出しているものの、GDP成長率で見ると、近年の成長率は4~5%で推移し、低迷している。政府は6%を目標にしているが、なかなかそうはなっていない。GDP1%の伸びで、雇用は4万人増えることになる。
  • 貿易では、国別輸出では、EU、中国、米国、日本、インド、シンガポール、韓国の順で、これらで6割を占めている。国別輸入では、中国、日本、EU、員がポール、タイ、米国、韓国の順で、これらで6割を占める。
  • ルピアの対米ドル為替レートを見ると、弱含みながらも安定している。1ドル=約13,000ルピア。インフレ率は年率6~8%で、物価は上がっている。特に、ガソリン・軽油価格の引き上げは大きい。
  • 国際収支で見ると、日系企業の投資がルピアを支える構造となっている。国別外国直接投資額で見ると、2008年以降、日本は常に上位を占めており、特に2011年以降は、シンガポールに次いで2位を占めている。
  • 日系企業の進出動向は、全体で1,500社に上り、製造業が7割、非製造業が3割。福岡からの進出企業は11社に上っている。
  • ジャカルタ周辺に企業が進出しており、特に市の東側に集積している。「JABODETABEK工業団地」には日系企業が多く進出している。こうした工業団地は、政府の許可を得て、民間企業(開発企業)が造成を行う。ただ、近年、交通量が急増し、工業団地からジャカルタ市内へ向かう道路の交通渋滞が激しく、市内に行くにも、空港へ行くにも、港に行くにも、移動時間の見込みが立てられない状態。これが悩みの種。
  • 耐久消費財の市場動向を見ると、ここ10年は自動車、二輪車ともに販売台数は伸びてきたが、2014年は落ち込んだ。これはガソリン価格の高騰によるものが大きい。2015年度の販売見込みは、自動車で110~110万台、二輪車で600~630万台と見こされている。なお、家電販売台数は、TV、冷蔵庫、エアコンともに、順調に伸びている。
  • インドネシアの人口ピラミッドは、20代までの層が一番多く、若い国。2050年の将来予想でもまだまだ40~50代の働き盛りの層が多くを占める。生産年齢人口が多い国であり、したがって、これからの消費も期待できる。
  • インドネシア人の消費は活発。ショッピングモールはジャカルタ市内だけで100ヶ所位ある。近年、市内への進出が規制され、郊外へと移っている。親日的なマーケットで、日本製の商品の人気は高い。
  • 今後のビジネスは、メリット、デメリットの両方あり、それを抑えての進出を考えないといけない。メリットは、なんといっても人口の多さ、市場としての魅力である。デメリットは、・インフラ不足(道路、電力、港湾、通信など全て)、・法的不透明性、低い予見可能性、・就労規制(就労ビザが降りにくい)、・輸入関税が突然上がるなど。
  • 大統領のジョコ氏は親日的。今後、民主化の定着、政権の政治的安定性がカギとなる。

(4)質疑応答
[一般家庭の生活は?] 

  • 共働きの家庭が多いので、外食が多い。消費は活発で、貯蓄という概念があまりなく、お金が入ると購入に走る。今後、自動車、家電といった消費財の購入が増えるだろう。

[失業率は?]

  • 失業率は4~5%。

[インドネシアの開発のカギは?]

  • ジャワ島以外の開発が課題。それにはインフラの整備、港湾、空港などの物流機能の強化が必要。

[A.S.E.A.N.経済統合で何が変わるか?]

  • ASEAN統合しても、域内の物品貿易はほとんど変わらない。ASEAN6は関税0、ASEAN4は関税90%は撤廃されている。国ごとに非関税商品の保護政策が出される。
  • インドネシアも、自由貿易にはネガティブ。それは、中国から安い商品が大量に入ってきて、国内経済にダメージを与えている。したがって、保護貿易も考えている。
  • ビザ問題。域内を含め、海外から大量にスキルを持った労働者が入ってきて、国内で失業が増えた。

[福岡からの企業進出は?]

  • 決して良い話ばかりではない。まずは、情報収集が大切。


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