Ⅲ 視察報告

2.日系弁護士/日系会計士との意見交換(「JETROジャカルタ」会議室)

 続いては日系弁護士/日系会計士との意見交換でした。なお、「JETROジャカルタ」の会議室を引き続きお借りしました。

JETROジャカルタ.jpg(1)現地対応者
○弁護士             津田 雄巳氏(左)
○会計士、労務管理士       岡本 秀郎氏(右)

(2)両名からの説明
[津田弁護士]

  • 海外進出を果たす際には、法律の面でいうと、これは当たり前ですが、現地の法律は現地語で書かれており、十分な言語力と法的知識が必要となる。しかし、開発途上国では公表されている法律が少ないことがネックとなっている。
  • さらに、告知のないまま、突然の法令改正があったり、法令間の不整合があったり、あいまいな条項が多い。
  • また、法令を無視した恣意的な運用や、担当者によって運用が異なったり、公務員の贈収賄が多いなど、開発途上国ならでは課題もある。
  • インドネシアでは、法人企業の現地開設にあたり、企業立地、資本提携、雇用など、あらゆる契約はすべてインドネシア語で契約締結することが求められている。しかしながら、日本企業のインドネシア現地法人に法務部員が不在であったり、日本本社の目が届かないことから、契約書が締結されていなかったり、不合理な内容の契約書が締結されてしまうこともしばしばある。
  • 法律を無視しないまでも、現地の実情をよく理解せずに、慣例などといわれて公務員へワイロを手渡したりすると、贈収賄の罪で罰せられたり、脱税容疑で告発されたり、さらに解雇訴訟に発展した例もある。
  • こうしたことから、現地駐在の日本人のコンプライアンス意識の向上はもちろんのこと、コンプライアンス体制を構築することが求められており、法務対策と合わせ、会計対策、労務対策の必要性を感じている。

[岡本会計士]

  • 外国投資は活発な状況。しかし、外資にはネガティブな新政策がとられている。大国としての存在感を増したい、ナショナリズムな部分もある。
  • 外国企業が進出際は、最低払込金額額は25億ルピア(約2,300万円)必要。
  • 外国投資の許認可を有する「投資調整庁」はネガティブリストを発行し、外国投資に対して投資形態、出資比率などの規制をかけている。規制強化された分野では、国内商社及び倉庫業は33%が外資、それ以外は国内資本。規制緩和されたのは、製薬業は85%外資、広告代理業はアジア諸国からの間接投資であれば51%まで外資。
  • ここ2~3年の消費増を背景に、政府の強気の姿勢が目立つ。国内企業が対応できる分野は外資に対して参入障壁を高くし、国内企業へ配慮をしている。
  • 外資系企業へのコンプライアンスは厳しい。ただし、携帯端末製造事業やバイオテクノロジー事業などのハイテク産業は外資歓迎である。
  • サービス分野も規制強化されている。例えば、コンサルティング業は投資承認にあたって親会社の事業内容、インドネシアでの事業目的、雇用創設、技術移転、社会貢献などを計画にするためのプレゼンテーションが必要。
  • 外資の投資許可は「投資調整庁」(BKPM)がワンストップサービスで提供が建前。しかし、実際にビジネスを始めるにあたっては、それぞれの管轄省庁から別途ライセンス取得や規制を受けることになる。例えば、建設業に対する公共事業省の規則により、公共事業省駐在員事務所での受注は1,000億ルピア以上に規制。また、国家建設行開発局(LPJK)により現地法人での受注は規模により受注額最低額が決定される。外資は大規模事業者で500億ルピアが最低受注額。運輸業は、外資系企業の場合、3年以内に授権資本金を1,000万ドル、引受資本金を250万ドルにすることが求められる。
  • このほかに、「外資建オフィショアローン報告規制」、「インドネシア国内取引のルピア通貨の強制使用」などがある。
  • しかし、投資促進のための政策も行われている。「タックスホリデー」は、法人税を5~10年間免除するというもの。「タックスアローワンス」は、投資額の30%を5%ずつ6年間損金処理、減価償却の加速返却、欠損金の繰延を最大10年間まで延長可能というもの。
  • 具体的な業種別進出案件
    • 自動車、二輪車の製造では外資100%可。
    • 国内商社(デイストリビューター)は、外資33%。
    • サービス関連は、eコマースは外資0%。ホテル関連は、1~2つ星は51%まで、それ以外は外資100%可。消費者金融は、外資85%まで。
    • 小売業は、原則内資100%でなければならない。しかし、例外的に売り場面積が大きい場合は外資参入可。コンビニは400㎡以上、大規模小売店は2,000㎡以上など。セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートなどは飲食スペースを設けてレストラン業で展開している。
    • 地方条例で、コンビニなど小売店で取り扱える製品の80%はインドネシア製品でなければならない。
    • 外食関連は、レストランは外資51%上限。
    • 不動産業は、基本的に外資100%可。
  • 進出形態
    • 外資会社は、現地投資家との合弁会社がほとんど。
    • 駐在員事務所は、BKPMが許可する商事ないしは非商事、公共事業省が許可するものが一般的。
    • 支店は、1960年代以降、認められていない。現地提携代理店への出向。近隣諸国および日本からの出張という形で対応。

(3)まとめ
 進出企業が現地需要に応えるためには、現地の法律はもとより、慣例などにも詳しい信頼できる弁護士、そして会計士や労務担当者を起用することがなにより大切だと判りました。
 したがって、県内企業の「ASEAN」進出にあたっては、現地の法律面からの法的支援、また会計・税務、労務管理の面からの支援も必要と思いました。

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