Ⅲ 視察報告

3.「ASEAN事務局」視察

ASEAN事務局01.jpg7月28日、3ヶ所目の視察先は、「ASEAN本部」でした。

(1)現地対応者
○ASEAN本部 経済共同体部門
市場統合理事 部長 Ho Quang Trung氏      

ASEAN事務局02.jpg(2) ASEANの概要
 「ASEAN」とは、Association of South‐East Asian Nationsの略称です。
 ASEANは、東南アジア10か国(インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポール、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、ラオス)の経済・社会・政治・安全保障・文化に関する地域協力機構で、本部はインドネシア・ジャカルタにあります。

 「ASEAN」は1967年の「バンコク宣言」によって設立され、当初は政治と経済協力を推進するということで、インドネシア、タイ、シンガポール、フィリピン、マレーシアの5か国が参加していましたが、1984年にブルネイが加盟し、「ASEAN6」が構成されました。以後、加盟国が順次増加し、現在は冒頭のとおり10ヶ国で構成されています。

 そして、これら10ヶ国は本年2015年末、経済統合を果たします。すなわち「ASEAN経済共同体」=「AEC」の誕生です。
「AEC」が実現すれば、域内の人口は6億人を超えることになり、人口規模で見ると、欧州連合(EU27ヶ国)の5億人、北米自由貿易協定(NAFTA3ヶ国)の4億6千万人、南米共同市場(MERCOSUR5ヶ国)の2億8千万人をはるかに上回ります。また、アジアでは、中国、インドに次ぐ人口圏域となります。

 現在のGDPの比較では、「ASEAN」は欧州連合及び北米自由貿易協定から大きく水をあけられていますが、今後、単一市場と単一生産基地の構築、域内関税撤廃、投資の自由化などが図られることにより、10年後には南米共同市場を抜き、中国やインドに匹敵する世界有数の経済圏が登場すると予想されています。

 事実、この10年間、「ASEAN」は高い経済成長を見せており、中間層も急速に拡大しており、世界の「開かれた成長センター」と見越されるなど、世界各国から熱い視線を浴びています。

Ho Quang Trung氏.jpgHo Quang Trung部長 世界から注目される「ASEAN」ですが、日本との関係は古く、1973年に設立された「日本・ASEAN合成ゴムフォーラム」に始まり、2013年には交流開始40周年を迎えています。

(3) Ho Quang Trung氏の説明

  • 私は、以前、福岡県に行ったことがある。福岡市内も穏やかな街で、とても良い印象を持っている。
  • 「ASEAN」は世界7番目の経済圏である。GDPは、2015年は、2009年と比べて9%程上がっており、「AEC」は経済的投資が進んでいる。
  • 「ASEAN」と日本との経済協力は進んでいる。
  • 2007~14年、日本からの輸入は140%に上昇しており、投資も日本が一番だった。
  • 「ASEAN」と日本との関係は、2003年10月に始まり、2008年10月から本格化している。この協力は経済のみならず、いろいろな分野に及んでいる。
  • 今後とも、「ASEAN」と日本との関係は良好に継続させたい。

(4)質疑応答
[経済統合が終わった後、どこに進むのか?]

  • 2016年以降、次のステップに進む予定だが、詳細はいまから詰めていくことになる。

[具体的な統合の中身をき聞かせてほしい]

  • 統合は、市場の統合である。
  • 貨幣は統一しない。しかし、今後、統一銀行としての「中央銀行」を設置したいと考えている。これはまだ、公表されていない。
  • 成長率は、当面、年率4~5%を考えている。しかし、外国からの投資次第ではこの成長率も上がる。したがって、日本からの投資を望んでいる。

(5)まとめ
 この間、「ASEAN」と日本はビジネスパートナーとしても緊密な関係を築き、2011年の日本と「ASEAN」の貿易総額は約20兆円にも上るなど、「ASEAN」は日本・企業にとって主要な投資先となっています。
 このように、「アセアン経済共同体」=「AEC」は日本企業にとって最重要な生産基地・市場であり、日本にとって「ASEAN」は経済的に脅威となる反面、絶好の市場ともいえます。そして、九州や福岡にとっても重要なエリアといえます。
 今後、県内企業、投資家による「ASEAN」への進出や投資を図るべく、本県として対策の重要性を感じました。

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