Ⅲ 視察報告
8.「インドネシア ダイハツ自動車工場」視察
今回のインドネシア視察の最後は、ジャカルタの「ダイハツ・カラワン工場」でした。
(1)現地対応者
○取締役所長 大上 誠司氏
○工場長 杉田 佳隆氏
(2)「ダイハツ・カラワン工場」の概要説明
大上取締役所長 「ダイハツ・カラワン工場」では、大上取締役所長から概要説明を受けました。
- インドネシアにおけるダイハツのシェアは、トヨタに次いで2位。トヨタグループ全体で見るとインドネシアでのシェアは1位である。
- ダイハツの主力車種は小型車とバンタイプが多い。
- 2014年は、インドネシア市場で120万台生産となり、タイを抜いてASEANトップの市場に成長している。こうしたことから、ダイハツはインドネシアを最重点国として、ヒト、モノ、カネを投入している。
- 現在、インドネシアのニーズに合わせた専用商品の投入に力を入れている。2013年発売の「アイラ」、「アギア」の2車種は、LCGC(ローコスト・グリーンカー)で、まさに戦略車。
- 軽自動車で培った技術を小型車に応用し、小型、廉価、省エネを実現。これらは拡大する中間層へのエントリーモデル。
- インドネシアでの成功のポイントは、・現地調達の推進、・仕入れ先とともに成長、にある。
- 30社以上の現地仕入れ先を新規開拓し、取引することで高い現地調達率を達成している。
- また、品質改善支援活動、合同スポーツ大会などを通じて、仲間づくり、チームワークづくりに励んでいる。
- 「ダイハツ・カラワン新工場」は、”SSC”「シンプル/スリム/コンパクト」をコンセプトに、インドネシアの環境にフィットするよう「進化」させた工場となっている。
- 新工場では<高品質:Quality Gate=止めて直す〉、<高可動:Easy Maintenance>、<快適さ:明るい、静か、暑さ対> を実践している。
- 同工場では、R&D強化(現地デザイン、現地生産)により、インドネシア人のニーズを商品開発に生かし、競争力ある車種をつくる。なお、開発・評価機能を持ったテストコースをインドネシアで初めて新工場に隣接して建設した。
- こうしたことから、インドネシアへの投資は5年ごと、3倍に達している。
- 現地パートナーとの協業も進めており、「アストラ・ダイハツ・モーター(ADM)」は、ダイハツ工業、豊田通商、アストラ・インターナショナルの3社による合弁会社。
- なお、現地マネジメントとの信頼関係を大切にしており、「ADM」社長はインドネシア人生え抜きのスディルマン氏である。
- インドネシアでの成功のポイントのひとつに、人材育成がある。優秀な現地人材の育成と雇用の拡大を図ることで、信頼される企業となる。
- ビジネス継続のキーポイントは、「現地に近づく」ということ。日本の商品そのままでは通用しない。現地を学び、現地の人々と共に作り上げたものこそが、顧客に評価される。そのため、「現地マネジメント力を活かす」ということが大切。
- インドネシア人は非常に素直で勤勉な、手先も器用。現地の方との信頼・パートナーシップ、すなわち良好な労使関係に努めることが良い仕事をする上でも大切。
(3) 質疑応答
[雇用は現地採用か?]
- 従業員は、基本、現地で採用する。最初の2年は契約社員で、働きが良いと次の1年を延長して契約し、2年を超えると正規社員として雇用する。
[労務管理は難しくないか?]
- インドネシア人の多くがイスラム教徒。1日に5回、必ずお祈りする。仕事中もそうであり、それはそれで割り切らないとここではやれなし。
- 工場の1階は食堂だが、2階にモスクがある。更に、職場職場で小さなモスクをつくっている。もちろん、労働組合もある。
[従業員の教育は?]
- インドネシア人は勤勉で、手先が器用。しっかりと教育すれば、いい従業員になる。
- 新入社員は、1週間は基本教育。その後、工場に入って、部署ごとに教育される。
[工場のライン、人員配置は?]
- プレス工場には107名が働いている。金型ラインは2つあって、どちらか一つが止まっても、もう一つで対応できるようにしている。
- 新工場のラインは6ラインで、世界で一番早いライン、組み立てとなっている。
- 金型のラインは、常に点検を怠らないように努め、不具合の減少に努めている。
- プレスのラインは、生産性を向上するため、ダブルスタックをとっている。常に、どちらかが監視し、見落としのないようにしている。
- プレスされた部品は、50台に1台は抜き出して精密検査をしている。これは日本とは違う独特のもの。色鉛筆で、クラッキングのチェックをしているが、2交代制でやっており、それぞれ色鉛筆の色が違う。
[歩留まりとかでないのか?]
- 基本、不具合は次の工程に流さないようにして、そのラインのどこで問題が発生し、どうしたら改善できるかということをやっている。いわゆる〝カイゼン〟をやっている。
[組み立ての流れはどういうものか?]
- アンダーボディー → メインボディー → Shell Line → 塗装
- メインロボットは「安川電機」製のロボット。
- ラインの流れる時間は、そのラインごとに違っているが、1.5分に一台の計算。
- 8台通ると、必ず1台をぬきとり、最終チェックする。スポット溶接のチェック、アンダーボディーのチェックなどをやる。
- メインボディー工程は、一番制度が求められる。ここではロボットを2工程に分けているが、大分県中津工場は1工程。
[どんな苦労があるか?]
- いろいろあるが、それは解決しないといけない。
- 停電はよくある。水もしょっちゅう止まる。
- ブレーキも、エンジンも、制御系は全て電脳、電子部品。さすがに、電脳部品は現地では作れない。日本から輸入している。
- インドネシアの法律で、85%以上は現地調達、現地の製品・部品を使わなければならない。
- 電子部品以外は、現地調達しなければならない。
[その他]
- 法人税は、インドネシアに収めている。
(4) まとめ
インドネシアは、「ASEAN」域内で最も多くの人口を抱えており、「AEC」の中心国でもあります。一人当たりのGDPは3,000米ドルを超え、これから消費爆発が起きると予想されています。
なかでも、インドネシア人が耐久消費財として購入を求めているのが二輪車、自動車、家電製品であり、最も伸びが期待される市場となります。加えて、今後欲しい商品として、パソコン、携帯電話、ピアノなどの楽器、家具などが挙げられています。
インドネシアでの中間層の拡大により、モータリゼーションは二輪車から自動車に移行することは明らかです。したがって、世界中の自動車メーカーはこぞってインドネシア市場を狙い、中国、韓国、ヨーロッパ、そしてインドなどの新興国からも自動車の売り込みが激しさを増し、次々と製造と販売の拠点をインドネシアに構えてきます。
こうした中にあって、現在、インドネシアにおける自動車の普及は日本車が圧倒的なシェアを占めていますが、うかうかしてはおれません。インドネシア人に親しまれ、インドネシア人の購買欲を掻き立て、インドネシア人が買える価格帯の車を開発し、販売していかなければなりません。
今回視察した「ダイハツ・カラワン工場」では、こうしたインドネシアの実情に合った、インドネシア人のニーズに応じた車の開発、製造、販売を進めており、今後の躍進を大いに期待したいと思います。
A