Ⅲ 視察報告
6.インドネシア・ジョグジャカルタ「看護学校」視察
7月30日、最初の視察先はジョグジャカルタにある「看護アカデミー NOTOKUSUMO」でした。
(1) 看護アカデミーの概要
①「看護アカデミーNOTOKUSUMO」財団は、創設者であるSedianto Soetioと家族、メンバーにより、1978年に設立が開始されました。
その後、Anglingkusumo教育機関によって支援され、1979年6月7日には「NOTOKUSUMO」という名称で看護アカデミーが設立され、同年6月14日、財団「NOTOKUSUMO」は正式に国家管理「看護アカデミーNOTOKUSUMO」という名前の教育機関として設立されました。
開設した一週間後、ジョクジャカルタの現在地に学校を開校しました。ここは、もと独立戦争中の建物で、当時のジョグジャカルタ市長のオフィスとして使用されていました。
その後、10年が経過し、Blunyahrejo、Karangwaruに新キャンパスを建設することになりました。
「看護アカデミーNOTOKUSUMO」は、ジョグジャカルタで最初の民間看護機関であり、看護師や医療現場で働く専門家の資格=ディプロマを取得させる学校です。その卒業生は、政府機関、民間部門を含めインドネシア全国で働いています。そして、近年では、オランダ、サウジアラビア、オーストラリア、マレーシア、そして、日本でも仕事ができるようになっています。
②同校のビジョン
1945年の憲法には、グローバル時代に競合することができる人材を作り出すとあり、こうした考えに基づき、プロの看護師、医療技術者を排出することとしています。
③同校のミッション
- 全国および世界規模で競争することができる学生を育て専門の看護師を養成する。
- 教育と訓練を通じて人材の質の向上を図る。
- 教育、研究、社会サービスの質の向上を図る。
- 健康の分野における科学技術の発展を図るため、施設やインフラを提供します。
- 道徳観、倫理観、習慣、国民の文化を浸透させます。
- 効率的協力パートナーのネットワークを構築します。
(2)日本政府とインドネシアとの経済連携協定(EPA)について
日本とインドネシアとの「経済連携協定」いわゆる「EPA」(2008年7月1日発効)に基づき、2008年度から、年度ごとに外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れを実施し、これまでにインドネシア、フィリピン、ベトナムから3ヶ国併せて約2,400人が入国しています。
その後、外交上の配慮として、一定の条件で、特例的な滞在期間の延長(1年間)を認め、候補者に、日本での就労・研修を継続しながらの追加的な国家試験の受験機会を提供することとなっています(2011年3月11日、2013年2月26日、2015年2月24日、それぞれ内閣閣議決定)。
対象となる候補者は、2012年度と13年度に入国したインドネシア人と、2013年度に来日したフィリピン人です。
これにより、看護師は3年、介護福祉士は4年の在留期間中、国家試験に合格しなかった人のうち、試験の得点など一定の条件を満たせば、もう一度試験を受けられます。
「EPA」に基づく外国からの看護師と介護福祉士の受け入れは2008年にインドネシアから始まりましたが、日本語の習得が難しいため、国家試験の合格率は看護師で約1割、介護福祉士で5割に満たない状況です。そのため、日本政府は2012年度以前の入国者にもこれまで2度、滞在延長を認める閣議決定をしています。
(3) 「看護アカデミー KEPERAWATAN」視察
「看護アカデミー」のホームページに、我が会派が視察したときの写真と詳細がアップされています。→
(https://www.akper-notokusumo.ac.id/home)
当日は、「看護アカデミー KEPERAWATAN」Soetio財団理事、Giri Susilo Adi, S.Kep, Ns.M.Kep会長、Septiana Fathonah, Adi, S.Kep, Ns.M.KepM副会長など、看護アカデミーディレクターや職員が総出でお出迎えされ、歓待の中意見交換を行いました。
この視察では、日本政府とインドネシアとの「EPA」による事業の推進状況をはじめ、インドネシアにおける看護師や医療技術者の養成の現状、インドネシアの医療状況などの話を伺いました。
(4) 「看護アカデミー KEPERAWATAN」の説明
- 看護アカデミーの生徒は550名。
- 看護師、介護福祉士の生徒。
- 看護アカデミーでは、過去、卒業生
- 30名を日本に送ったが、日本の看護師資格を取得したのは1名のみ。
- 日本語は話すことよりも、漢字、特に語彙が難しい。
- 看護アカデミーでは日本語も教えている。
- 日本政府とインドネシア政府との間で「EPA」が結ばれているが、制度の問題というより、日本語の難しさが壁になり、資格取得が進んでいない。
(5) まとめ
看護アカデミーの歓待を大変嬉しく感じました。それは、とりもなおさず、我が会派への期待の大きさを物語っています。
看護アカデミー側からは、インドネシアから日本へ看護師を送る事業を促進するため、我が会派の協力をお願いしたいという要望が出されました。
日本政府とインドネシア政府との間で結ばれた「EPA」、とりわけ介護・看護の分野での協定が十分に発揮されるよう、我が会派としても国に意見を述べていきたいと思います。
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